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カミングアウト
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貴仁のその告白に皆は目を丸くした。
しばし口をポカンと開けたままで居るほどだったが、樹がわぁ!と大きな声をあげる。
「えー!!意外っす!!!貴さんの彼女になる人はみんな料理上手で頭良くて、香奈子さんみたいな方かと思ってました!」
ここで何の悪気もなく、亡くした恋人の名を挙げられてしまうのが樹の気遣いに欠けるという点である。
付け加えて言っておくが、本当に悪気はない、のだ。
真奈は、あぁ、まただ。と頭を抱え、淳也はコラと渇を入れる。
「……うーん、そうだなぁ、別にそこにこだわって人を選んだりはしないけどな、確かに好みの女性はみんな料理が上手かったし、驚くよなぁ……」
貴仁は、そこまで言うと言葉をとぎり、
自分はもう、龍希が料理が下手だとかを忘れるほど、あいつの作ったモノなら美味しいやと食べているんだなぁと思うと、可笑しくて、愛しくて、
だって、このあいだの麻婆豆腐だって、2人で酷い味だと喧嘩をしながら、結局楽しく完食したしなぁと、思い出し、ふふっと笑み、うん。と何かを心に決めて頷くと、再び口をひらいた。
「あのな、家に着く前に言っておくけどさ、少し、驚かせてしまうかもしれない。……それでも、それでも俺は本当にお前達に紹介したかったし、無理でもいいから知って欲しいって思ったんだ。……よろしくな。」
改まったように伝える貴仁の様子を不思議そうに見る樹と、何か余程歳の差とかかしら?と思う真奈、そして、唯一貴仁とは学生時代からの腐れ縁の淳也は
その貴仁の姿に無言で、どうしたんだ?と心配の瞳を向ける。
淳也の視線には勿論気付いた貴仁だったが、
それには応えず、
「まぁ、そういう訳で、驚かしてしまうかもしれないし、料理の味も保証はしないが、そりゃあ、頑張って作ってくれてるんだ。心して食えよ!」
と、あはは!と笑ってみせ、家へと向かった。
家へと着くと、貴仁が1人先に中へと入って行き、3人は玄関にも入らずしばし外で待っていた。
「なーんかもったいつかせますよねー!驚くってなんすかねー。」
樹が落ち着きなくフラフラと歩き回りながら言うのを適当に相手をしながら、純也は昔来た時との違いを既にいくつも見付けていた。
玄関先の植物を飾りたてていた装飾が無く、手入れも以前よりは少し手が届いて無いようだ。
玄関先からチラリと覗ける庭の様子も、明らかに咲き乱れていた花達が姿を消しているし、
貴仁と二人、いつも庭に追い出されて煙草を吸っていた場所にも灰皿は無くなっている。
今日紹介されるその彼女が、香奈子のモノを完全排除したかったのだろうとも考えたが、
それにしては、香奈子のお気に入りだったものや花は丁寧に残されている。
「……あれか?花や可愛らしい飾りにもそこまで興味なくて、元カノの存在も気にしなくて、煙草も室内OKな彼女ってか?」
見付けたそれらから思わず純也がそう呟くと
樹が、まじっすか?!クール系美女っすかね???と眼を輝かせてから、「彼女さんの友達紹介してもらお!!」と1人テンションを上げた。
その時、
玄関があき、貴仁が顔を出すと
「またせたな、入れよ」
と皆を招き入れた。
玄関に入るとワイワイと樹と真奈が靴を脱ぎ上がろうとする中、純也は有るものを見付けて眼を見張った。
『……これって…。』
その疑問を問いたくなり、無言で貴仁を見ようとしたが、樹達の相手をしている貴仁とは目が合わぬまま、純也もまた靴を脱ぐと、
自分が見付けてしまった明らかに貴仁らしからぬデザインの、男物の靴の横にそれを揃えて置いたのだった
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