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あの、ぶんぶんとふった手が何かを断ち切る事に成功させたのだろうか?それとも、彼が自分へ嘘を付くのが得意なだけだろうか?
数日後には、
すっかりいつもと変わらぬ様子を見せる龍希の姿が、
都内のあるメンズ服ショップのレジスペースに存在していた。
あの雨の日にはさすがに少し動揺したまま必死に平静を装ったが、
翌日にはすっかり無理すらしていない風の龍希を見ることが出来た。
無論、1つも無理をしていない。と、言う訳ではなかった。
そうではなかったが、無理をしていると自分ですら認識しない程度に嘘を付くのは、彼の得意とする事だった。
……誉めるような事では無いが。
さて、今時期店は特別繁忙期な訳でもなく、
比較的穏やかに落ち着いたペースでの仕事が可能だった。龍希はここの店長だ。
優しくも有るが、優しい口調に油断をすると、言う事はいずれも直球で、オブラートには包まない厳しさ。と、スタッフ内でも、
笑顔で人を刺すタイプ。
と、囁かれていた。
それでもいざという時のフォローの速さや、初めての店長業を頑張る姿勢は、
スタッフ全員から、愛される存在でいた。
「店長、ちょっといいですか?」
レジスペースで書類に目を通していた龍希の耳へ、女性の声が届いた。
「…ん?どうしたの、まぁこ。」
まぁこ と、呼ばれたまだかなり若いその女性は、
この店唯一の女性のアルバイトスタッフで、
名前を、岡田麻理子 と言い、
皆からは「まぁこ」と呼ばれていた。
「あの、このラインの発注なんですが、入荷予定、遅くても昨日……どう考えても今日この時間には必ず有るはずですよね?……」
そう言って伝票の商品ナンバーを見せた。
そのナンバーで解る事は、その商品がどのラインであるか……つまりは、シャツやパンツなど、大きく分けてどの仲間であるか、と言う事だった。
「…あぁ、そのラインならもう、昨日全部届いただろ?」
ほら、あの辺…と、言うように龍希は指でそのラインの商品を打ち出したスペースを指す。
「…それは、そうなんですけど…1つ入っていないやつが……てか、取り寄せ発注で………」
指で指した時点で、もう一度探させようかと言うつもりが有ったが、
ふと見た麻理子の表情から、無いのが明白で、さらに無いと困る類いの発注なのだと察した龍希は、
ながら作業で聞くのを止め、
手にしていたやりかけの仕事を完全にストップさせると、見せて。と、麻理子から伝票を受け取り
「商品カラーとサイズは?」
と真剣な顔で尋ねた。
麻理子はと言うと、指でスペースを指された時点で、
もう一度探してみろ。と、言われる想定をしていたのか、龍希の姿勢に少しばかり顔が明るくなった。
そしてすぐに言われた内容を伝える。
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