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日常
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2人にとっては大きな事件であった今回の別れも再会も、
過ぎ行く時は、いとも簡単に日常へと変えてくれた。
貴仁は、相変わらず仕事を開始すると、部屋に籠もり、人を寄せ付けない。
龍希も最近は店が忙しく殆ど顔を合わせない日々もある。
ここまでは、以前とほぼ同じ日常。
今は、1つ違うことが有る
それは、龍希が完全に実家へ戻らなくなったと言う出来事が加わり、
2人は幾ばくか奇妙な同居生活をスタートさせていた。
龍希が実家へ帰らなくなった理由を
先に話そうと思う
実の息子として、愛されている実感は無くとも、
母親を嫌ってはいない龍希は、以前は週に2度3度は実家へ帰り母親の顔を見るようにしていた。
それが何故全く戻らなくなったのか?
それは、
ここ最近、離れて暮らしていたはずの父親が、
頻繁に来るようになっていたからだ。
この父親はというと、龍希が幼い頃、
何かにつけて彼を痛めつけていた父親だ。
熱湯をかける、煙草を押し当てる。
それらが主な内容で
立派な虐待であるのだが、当時、龍希の中では自分が虐待されている被害者だという意識は無く、
痛くて嫌だけれど、父は自分を家族だと思ってくれているのだから、愛されるには、受け入れなければ
と、いう認識に変換されてきている。
それは今でも変わらないが、さすがに虐待だったのだろうと言う事は理解しだした今の龍希が、
恐怖と嫌悪とで、父親に会わないように生活をするのは自然な流れと言えるだろう。
何より、母がまた、自分と父との間で悩むだろうと思った。
自分が虐待をされたりしたら、また母は悩む
母親が心から愛しているのは、
子供の自分ではなく、昔から父親だったからだ。
そして龍希はこうも考えていた。
いつ縁を切られても不思議ではないくらいの関係である自分を、
母親がまだ愛してみようと思ってくれていて、まだ家族でいてくれているだけでも、
幸福だと龍希は理解していた。
───家族という関係が消えるよりずっといい。
そう思えばこそ、
父親とはなるべく会わない生活をするのが最善と思えたのだった。
その結果、
今ここには
愛している男への想いを諦め、友人で在ろうとする龍希と、
明らかに変化を始めた己の気持ちを知ろうと思い悩む貴仁が生活を供にしていると言う奇妙な日常が存在するのであった。
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