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前進から、確信。
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頭は更に混乱を呼んだ。
脳裏に浮かぶのは、
「何のつもりか?」や「オレに気使わなくても」
などと、【ポジティブ】と言われた事のあまりない龍希自身にも、さすがに今それを言うのは違うだろう。
と、理解出来る言葉達ばかりであった。
もう無理だと信じていた。
寧ろ友達のままで居られるのならば、その方が良いのだろうと心に決めたのがつい最近であった。
素直に喜ぶなど、どうして出来るだろう?
そうしている間にも、貴仁の手は、優しく握り直してくれていた。
そして、
その顔がゆっくりと上げられる。
目があってしまったその表情は、
不安が消せないままに、けれども決意も見える瞳で。
視線は逸らす事無く、真っ直ぐと龍希を見つめるのであった。
そして、ゴクリと唾を飲み込んだかと思うと、
震えた唇が小さく動き声を生み出した。
「……正直、解らない気持ちの方が多いけれど……」
見るからに弱々しい声を出しそうな貴仁の口元からは、
思った以上にずっと強く、しっかしとした声が零れた。
そして、そのまま更に続けるのだった。
「……今、間違いなく、この手を。龍希の手をさ、繋ぎたいと、思ったんだ。」
少し、息を整えるかのように、そこで少しの間を取ると、その視線は一瞬外されたのだが、
それを過ちとするかのように、再びその視線は龍希を見つめた。
それは、彼自身の持つ強さではなく、
彼を取り巻いてきた環境が作り上げた、強さと自信。
「あと、さ。……ずっと解らないままで居たけども、それでも俺は……お前に幸せで居て欲しい。とか、笑っていて欲しい。とか……思うし。嬉しいって、感じるんだよ。」
玄関で龍希の靴を見て感じた喜び
偶然見つけた手紙を読んで感じた、込み上げる感情
貴仁はその1つ1つを思い起こしながら言葉にしていった。
すると、不思議な事にその1つ1つは、言葉にした途端に何の違和感も無く己の中に存在している事に気付いた。
まるで各々の居場所を当たり前のように見つけ、くつろいでいるかのようであった。
同時に貴仁は、知る。
───あぁ、そうか、これは俺の本心だったのだ。
しっかりと今それを彼は確信したのだ。
さて、そんな確信にすっかり安堵した貴仁と反比例する心情なのは、龍希である。
安堵、などとは程遠い、パニックと訳も解らぬ罪悪感のような重い感情、そして、自己否定にまみれた心をなんとか1人で抱えていた。
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