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先生への片思いは続いているけれど、変わった事もある。
先生は違う学年の担任で僕との接点はないに等しいから、たまになら良いと言われ、先生がよく居る数学の教科担当室に入れる事になったのだ。月に二回、先生が忙しくないという時にだけと自分で決めた。そして必ず教科書とノートを持って行く。理由もなくそこに居るのは何だかおかしいと思い、先生に勉強を教えて貰う事にした。
「先生、この問題なんですけど…」
「どれだ?」
一つ一つ丁寧に教えてくれる先生の横顔を見る。問題に向き合っている先生はとても楽しそうで、輝いて見えた。ずっとこんな時間が続いてくれればいい。でもそれは叶わない。僕はいずれ卒業する。だから、卒業してからも、こうやって先生の傍にいられたら。あの時感じた喜びや幸せよりも、もっと、もっとと先生を求め、日に日に欲深くなっていく自分がいた。
僕が先生に思いを告げてから一年以上が経った。僕は相変わらず先生の元へ通っている。
僕はもうすぐ受験で、それが終わればあっという間に卒業を迎える。こうして先生の元へと通えるのも、残り僅かとなった。今日はいつも行く時間よりも遅くなってしまったので先生の元へ急いで向かう。
室内を覗くと先生の後ろ姿が見えた。ほっと息を吐いた時、もう一人、別の男の先生の姿が見えた。確か二人は同期で仲が良いのだとクラスメートの女の子が話しているのを聞いた事がある。
「お前、結婚するのか?」
聞こえた、結婚という言葉に目の前が真っ白になる。それを言ったのはもう一人の先生だった。
「…それ、誰に聞いたんだよ」
「いや、お前の机の上に見合い写真があったから。お前が結婚するとなれば女子生徒や同僚の女性は泣くだろうね」
先生が、結婚する。それは余りにも衝撃的で、僕の心を一瞬で粉々にした。
手からは教科書や参考書が滑り落ち、茫然とその場に立ち尽くしていると、部屋のドアが突然開いた。
「うわっ!ごめん、まさか誰か居るとは思わなくて。何か質問でもあるの?」
その先生は落ちている参考書などを拾って僕に差し出す。それを受け取り、お礼を言おうとするのに声が出せない。ただ口をぱくぱくさせているだけの僕に困り果てたのか中にいる先生を呼んだ。
「この子、お前の持っているクラスの子?」
先生は振り向き僕を見た途端、慌てて立ち上がった。
「彼奴に用事だったのか。俺はもう用は済んだからどうぞ」
そう言って僕を中に押入れるとその先生は行ってしまった。
「あ、さっきの話…」
先生は口元を手で覆った後一度息を吐くつと、言いにくそうに切り出した。
「結婚、されるんですね」
僕は笑顔を向けて言った。
「おめでとうございます」
先生は目を見開き僕を見ている。僕はゆっくりと先生に近付くと、精一杯背伸びをし先生の服に縋りつくと、軽く触れるだけのキスをした。それはほんの一瞬で、でも触れた先生の唇はとても柔らかく、温かかった。
「僕、やっぱり待てませんでした」
縋りついていた手を離し、ゆっくりと後ろへ下がる。
「先生、これでもう、さようならです」
頭を下げると、先生の顔は見ずに背中を向けた。
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