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昔話
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「夜久って 本当に小さいよな」
「女子みてぇだよな 可愛いけど♡」
入学したてのあの頃
今よりも小さかった俺は
よく先輩達にそう言われては からかわれていた
でも そんな風に言われるのは慣れっこだったし
一年が 二三年と揉めたって
良い事なんて何も無いと思っていたから
ヘラヘラ笑って流していた
なのに
「小さいからって バカにするなんて
本当 頭悪いですね」
黒尾の放った一言は 部内を一瞬で凍りつかせた
その時の先輩達は 本当にタチが悪くて
黒尾は その日ずっと外を走らされた上に
片付けも一人でやらされていて
俺は黙々とモップをかけている黒尾に声をかけた
「…何で あんな事言ったんだよ」
黒尾は普段 面倒だと思ったら
自分だって適当に誤魔化していたし
多分そういうのが 誰よりも上手かった
「ずっと思ってたから」
…コイツは 馬鹿なのか⁇
「ほっときゃ良いんだよ あんなん…」
「…………」
黒尾は モップをかける手を止めて
俺の方を ジッと見つめてきた
その真っ直ぐな眼差しを直視出来なくて
俺はつい 俯いてしまった
「だって ムカつくだろ
お前 アイツらの誰よりもレシーブ上手いのに
何で小さいってだけで
馬鹿にされなきゃいけねぇんだよ」
黒尾の言葉に 俺は益々顔を上げられなくなった
大袈裟って言われるかもしれないけど
本気で涙が出るかと思った
当時 一年ながら 部で 一番背が高い黒尾が
そういう風に言ってくれた事が
めちゃくちゃ嬉しかったんだ
俺は 黙って体育倉庫に入ると モップを持って
黒尾の横に並んだ
「おい お前まで目付けられるぞ⁇
折角可愛いのに」
「可愛いって何だ⁉︎
別に… 俺 走るの嫌いじゃないし…」
「…ふ〜ん」
ニヤニヤしている黒尾を蹴り飛ばして
俺は ダッシュでモップをかけていった
この日を境に
俺は小さいと言われたら怒る様になった
そうしても良いんだって黒尾が教えてくれたから
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