アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
信愛Ⅲ〜side黒尾〜
-
「…クロ」
研磨に呼ばれて顔を上げた
いつもと同じ様に見えたけど
なんと無く 少し違う様に感じてドキリとした
「どうした⁇」
「…ちょっと来て」
手招きされて 後をついて行った
少し歩いた所で くるりと振り向いた研磨は
微妙に笑っているのに スゴく淋しそうに見えた
「…研磨⁇」
「…あのね」
「…うん⁇」
研磨の瞳が揺れた気がした
勘違いかと思った次の瞬間 それは確信に変わる
「…あ…」
研磨の目から
らしくない物が流れ落ちていくのを見て
俺は目を見開らいた
そして無意識の内にその華奢な身体を引き寄せて
小さい背中や頭を 宥める様に摩った
それでも研磨の涙が止まる事は無く
俺のTシャツが だんだんと濡れていく
「…研磨⁇」
「…クロ…」
「ん…⁇」
研磨が 少しだけ顔を横向きに変える
でも俯いているため
その表情を 俺が見る事は出来なかった
「…前も… こうしてくれたよね…」
研磨の言葉に 子供の頃を思い出した
いつもの様に バレーをやろうと
研磨を誘いに行ったあの日
普段からお互いの家を行き来していたから
インターホンに応答が無くても
取り敢えずドアノブを捻った
そして 少し空いたリビングのドアの隙間から
今にも泣きそうな研磨が見えて
その時 俺は初めて
自分に守りたいものがある事を知った
だから 研磨が Ωだと知った時
俺達は番になる運命なんだって そう思った
その時の気持ちが走馬灯の様に駆け抜けて
研磨を抱き締める腕に 自然と力がこもる
「…俺に… 発情期が来なかったらさ…」
研磨の言葉に 正直ドキッとした
研磨に発情期が来ない事は
日を追うごとに気になっていた
勿論 このまま
俺が離れた時に来たら嫌だって言うのもある
でも そうではない考えも
日を追うごとに増していって
昔とは違った不安に駆られていた
「…そしたら… 俺の事なんて…
…気にしなくて… 良い… からね…」
研磨の声は震えていて 聞き取り難い
でもその体は小刻みに震えていて
俺は 今にも壊れそうな研磨をきつく抱き締めた
「…何言ってんだよ そんなの関係無い…」
俯いてる研磨の顔を上げさせると
涙で潤った金色の瞳と目が合って
何だか全然知らない奴の様に感じた
きっと研磨は
ここ数日の俺の動揺を見抜いてたんだと思う
一体どんな気持ちで
今俺にこんな事を言ってるんだろう…
研磨の胸の内を想像するだけで
俺の目にも熱い物が込み上げてくる
「…俺が好きなのは 研磨だ
お前が本当は Ωじゃなかったとしても
俺が 一生一緒に居るのは研磨だけだ…」
「…クロ」
白い肌に手を添えて 花の様な唇に触れた
其処は涙という蜜に濡れて何時もと違う味がした
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
75 / 114