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話の後に 3
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ぎゅうぎゅうの車内からようやく解放されて、俺はホームで一息ついた。
「大丈夫?」
雪弥さんに声をかけられ、数度首を縦に振る。
「大丈夫です、もう見た目はズタボロですけど…」
「うち、改札出て五分くらいのとこだから」
「あ、はい。…あの、本当に急にお邪魔して迷惑じゃないですか?」
ずぶ濡れになった服のままで他人様の家に上がり込むのは少し気が引けた。しかもそれが憧れの先輩役者の家なんだから尚更だ。
「何言ってるの。僕が誘ったのに」
雪弥さんは、俺の言葉を軽くあしらって、二歩ほど前を歩いて先導してくれる。
そして、改札の付近までついた辺りで、ふと立ち止まって振り返る。
「あ。もしかして、遠回しのお断りだった?僕、空気読めてなかった?」
「それはないです!」
思わず声をはりあげると、雪弥さんは「なら、良かった」と、相変わらずの柔らかい笑顔を見せて、また向き直る。
改札を抜けると人通りも減ってきた。
二本目の角を曲がったところで、あそこだよ、と一軒のマンションを指差した。
「本当に近くなんですね」
「ね、言ったでしょ」
悪戯っぽく笑って、エントランスに入っていく雪弥さんに手招きをされて、慌てて後を追った。
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