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仕事終わり 2
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「良かった…人違いじゃなくて。これ、真都さん落し物です」
彼女の華奢な手から小さな手帳が差し出される。
わずかに息を切らせているし、走って追いかけてくれたのか。
「落としてた?あ、本当だ…ありがとう」
いつも手帳を差し込んでいる鞄の外ポケットに、手帳の姿がない事に言われて初めて気付く。
併せてポケットの留め金具がだいぶ緩んでいる事にも。
「落とす所偶然見たので、その…手帳の中身は見てないので」
「あー、大した事書いてないから、大丈夫だよ。仕事の予定も最近は携帯に入れちゃうし。でも助かったよ、ありがとね」
実際、手帳はいつも持ち歩いてはいるものの、打ち合わせのメモ帳代わりに使う事が殆どで、乱雑に書き殴っているから、もし中身を見たとしても、内容なんて解読出来ないだろう。
「ごめんね、本当はこういう時は、お礼にご飯でも奢るって言いたいんだけど、君みたいなアイドル人気のある声優さんは、二人で行くのは多分無理だろうから…」
言葉を濁すと、彼女も何かを察したのか申し訳なさそうな表情で頷く。
「はい、事務所にも行く時は三人以上って厳しく言われてます…」
「だよね、今度みんなでご飯行く機会があったら誘うから。その時はご馳走させてね」
「ありがとうございます!私…真都さんのこと尊敬してて、私と芸歴そんなに変わらないのに、実力があって、事務所の人にも見習いなさいって言われてて…」
「大袈裟だよ。勿論そう言って貰えるのは嬉しいけど。俺もまだまだ覚えなきゃいけないこと山程あるし…」
褒められるのは嬉しいけど、俺の実力は、あくまで駆け出しの役者にしては…っていうレベル。
間違っても、ベテランの人に前にして遜色ないとは到底言えない。
いつかはそうなりたいと思っているけれど。
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