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矛盾する時 2
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雪弥さんと別れて事務所に入って、俺は荷物を受け取る。
ちょうど昨日の舞台千秋楽に預かったものの仕分けが終わった所だったようで、有難いことに、また大量の荷物が用意されていた。
でも、段ボールじゃなく、紙袋2つ分におさまっているから、なんとか自力で持って帰れそうだ。
早めに来ておいて良かった。
マネージャーと、次の仕事の打ち合わせをする時間も少しだけど取れたし。
いいタイミングだったな。
仕事は新しく、雑誌の取材と、ラジオのゲスト出演がそれぞれ2件づつ入っていた。
さっき声優をやってきた、アニメの番宣と、昨日千秋楽を迎えた舞台のDVDの宣伝の為だ。
アニメの番宣は、主役級二人が中心の内容だから大丈夫だけど。
問題は、舞台の方だ。
…しかもラジオ。
DVDの発売に合わせてのスケジュールだから1ヶ月は先の話だけど。
出演者の中にある雪弥さんの文字に俺は動揺した。
「これ、雪弥さんと一緒に出演なんですか?」
「そうよ、先方が二人の掛け合いを気に入ってくれて、マナと雪弥くん。次の週に主人公たちをゲストにして、2週連続で宣伝してくれるって」
有難い話なんだと思う。
頑張った演技が認められて。
仕事が増えて。
その延長で好きな人に会うチャンスまである。
でも、好きな人に思いを伝える事が出来ない。
そのチャンスだけが巡って来ない。
俺にとってそれは、ちょっとした絶望感を孕んでいた。
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