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不協和音 5
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「やっぱ帰ろっか」
俺が返答に困ってる間に、雪弥さんが口を開いた。
「え、あ、あの…」
「また今度にしよ。本当は会える予定じゃなかったのに、真都くんの顔見れて欲張っちゃった」
気を使わせてる。
雪弥さんの表情は笑顔だけど、多分それは無理矢理な作り笑顔だ。
すぐにそれが分かるのに。
雪弥さんからの「帰ろう」の言葉にほっとしている情けない自分がいる。
「真都くんも忙しいんだし、僕の都合で急に色々誘われても困るよね?ごめんね」
「そんなことないです。誘って貰えるのは本当に嬉しいんですけど…」
「気にしないで。そういう日もあるよ。また地方公演全部終わったら改めて連絡するから」
「はい…」
俺の短い返事を聞き届けると、雪弥さんは「じゃあまた今度ね。お疲れ様」と一言行って、駅の改札へ向かってしまう。
「お疲れ様です」
声はおそらく雑踏にかき消されて、雪弥さんの耳には届いてない。
けれど雪弥さんは、タイミング良く振り返ってくれて、手を振った。
それがどうしようもなく嬉しかった。
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