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一話目-2
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『ユイか。いい名前だな』
ヤマトには妹がいて、昔の妹とユイを重ねてみていた。
妹も小さいときはこんな可愛かったのに、なんてな。
ヤマトが頭を撫でてやるとユイは赤くなって俯く。
『俺はヤマトってーんだ』
『ヤマト……?…ヤマト…』
ユイは顔を上げて名前を口の中で転がすように繰り返している。
『そう、ヤマト。ユイ、いい子だな。立てるか?』
ヤマトが立ち上がり手を差し伸べるとふらふらとしながらユイが手を伸ばす。
でも体力を相当消耗していたのか、それとも栄養が行き渡っていないのか。
もう少しというところで倒れそうになった。
『っ…、ユイ!』
ヤマトが抱きとめてやったから良かったものの、冷えたコンクリートにユイの体が打ち付けられるところだった。
『大丈夫か…?……ユイ、ここのところ何も食べてねえだろう…?』
探るようにヤマトが見るとユイは目を泳がせる。
『……まあ、言いたくなきゃいいんだが……。って、お前、下も着てねえのか……』
まるでワンピースのように大きなTシャツだから気にはならないが、足も細く、まるでダイエットし過ぎた女子高生の足だな、なんてヤマトは考えていた。
半袖と言っても丈がワンピースになるくらいだ、袖も肘くらいまで長くダボダボしている。
『……下着は着てるよ?』
抱きつく格好のままユイが言った。
『そーゆー意味じゃねーけど……。寒くね?これ……着てるか?』
ヤマトが羽織っていたコートを着せるとユイは嬉しそうに袖を通した。
『オラ、ちゃんと前も閉めろよ?寒いだろ』
コートのボタンを一つ一つ閉めてやるとユイは嬉しそうにコートに頬を寄せる。
『ありがと、ヤマト。これ、暖かいよ』
『そーかそーか。良かったよ』
そしてヤマトは考えた。
ユイはここから数百mとは言え、ヤマトの家まで歩けないだろうと。
結論に至ると素早く行動に移した。
『ユイ』
『えっ?えっ!?』
ヤマトはユイをお姫様抱っこしたのだ。
↺
「おい!」
尚斗がまた不満気に手を上げる。
「はい、尚斗くん」
英語の教師のモノマネをしてみたのだか、誰も何も言ってくれない。
「これ、非現実的過ぎると思うんだが!!」
「えー、俺は好きだよ、そーゆーの」
尚斗の言葉と反対に怜が優しく返してくれた。
「でも、これってなんか先読めちゃうよなー」
さっきまで怜にしなだれかかっていた流星は毛先をいじりながら呟く。
「色んな意見は後で聞きまーす。とにかく続けるから」
それでも尚斗は不満そうだ。
だが……きっと感動系に弱い尚斗は途中泣くだろう……。
泣いた面が楽しみだぜ。なんて一人でほくそ笑んでいた俺だった。
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