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だいたい、俺は甘いものがあまり好きではないのだ。
響に付き合って、しょうがなく食べる程度。アイス一つで騙されるわけにはいかない――と、思ったのだが、
「抹茶味なら食べられるよね?」
自分用のはオレンジ味のアイスキャンディだったのに対し、俺用に買ってきてくれたのはそれなりの値段がするアイスクリームだった。
心配してくれた、というのは本当なのかもしれない。
「まったく。連絡も無しに休まれると困っちゃうよぉー」
彼はまるで自分の部屋にいるかのように、床に寝転がる。
右手で頬杖、左手にはアイス。こなれた様子でこぼさず食べ始める。
「今日、すごくヒマで寂しかったんだからね」
「……ッ!」
アイスのふたを開けながら、俺は思わず肩をすくめる。
胸の奥が苦しかった。
違う。
俺がいなくったって、響はうまくやり過ごせる。きっとどうってことない。
なのにこんなことを言うのだ。
「やめてくれ……」
小さく放った声は当人に届くことはなく、
「あっ! どうしたの、そこ」
何も知らぬ彼は大きな声を上げた。
驚いたように目を丸くし、アイスの先をこちらに向けている。
気づかれた――。
慌てて首元を隠し、言い訳を考えるも、
「それ、猫? 犬?」
響が見つめているのは右腕だった。
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