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「ところでお客様、何をお探しですか?」
かと思えば急に店員面してきやがる。
完全におもちゃにされているようだ。腹が立ってしょうがないが、イラついてはいけない。余計にからかわれるだけだ。
深く息を吸い、気を落ち着ける。
「本じゃない。店員を探してる」
「はい?」
「た、立花響って……いるだろ」
改めてフルネームを口にすると、どうも照れる。語尾が小さくなってしまったが、伝わりさえすればどうでもいい。
尾津は静かに目を細める。
「ふーん。彼をご所望ですか」
「黙れ」
「今日はシフト入ってなかったけど」
「……そうか」
――大学ではそんなこと言っていなかったが。
「もしかして響くんと知り合い?」
「ああ。友達だ」
「……そう」
疑うように俺を見てくる。
その口元には、何か言いたげな薄い笑み。
まったく、勘のするどいヤツだ。油断できない。
「いいか、誤解すんなよ。ただの友達だからな」
――少なくとも現状では。
「フーン。そういうことね」
“そういう”ってどういうことだ、とは聞けなかった。
少しでも墓穴を掘るような真似をすれば、突き落とされるに違いない。
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