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繋ぐ罪/遡る日(74頁)
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◆ ◆ ◆
今から三年前、高校のときのこと。
「修学旅行にはいかない」と告げると「じゃ、ボクも行かない」と響は笑った。
そして「一週間休みになるじゃんね!」と喜んでいた。
実に甘い考えである。
不参加だからといって、学校そのものが休みになるわけではない。
いつもの時間に登校させられ、図書館の自習室に集められるのだ。
その数、俺と響を入れて約十五人。
各々、本を読むなり、勉強するなり、旅行の代わりに自分の糧になるようなことをしなさいと言われる。
いつもの学校とは思えぬ、とてもゆるい雰囲気。
一応、見守りの先生はいるものの、日本語がカタコトの外国人教師で、
「サムライ、ブシドー、サイコー!」
と、子供のように目を輝かせながら前方のテレビでDVDを流し始める。
チャンバラ映画だった。白黒、英語字幕つき。
ほとんどの生徒はそこに集まっていた。
響はその映画を何度も見たことがあるというので、本を読むことにした。
二人、ならんで自習用の席に座る。
俺は持参していた文庫本を開いたのだが、響はなにを張り切っているのか、文学全集を持ち出してきた。
それは、大きく、分厚く。
机に置くと、ドシン、と巨大獣の着地のような音がした。
早くも嫌な予感がしたが、何か言うのも面倒臭い。
ひとまず無視することにした。
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