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ふたり/ヒトリ(83頁) ▼嘔吐有り
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◆ ◆ ◆
夢を、見ていたらしい。
「ん……」
誰もいない、冷たいベッドで目を覚ます。
見慣れない部屋に、一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。
頭が混乱している。
数秒のあと、ここがホテルの一室だと思い出した。
「――ッ!」
慌てて身を起こそうとした途端、ズン、と腰が痛んだ。
再びシーツへとなだれ込む。
身体の奥底が腫れているような熱い痛みに、脂汗がにじんだ。
自分で自分の体をさすりながら、細く息を吐く。
痛い。
少しでも動かそうとすると、全身が軋む。
だが、いつまでもこんなところで寝ているわけにはいかない。
ベッドから転げ落ちるように這い出す。床に手をついたとき、喉の奥から胃液がこみ上げてきた。
口の中で苦味と酸味が混じり合う。
「――うっ」
その味が引き金となって、猛烈な吐き気が込み上げてきた。
体の痛みを引きずり、えづきをおさえながら、必死にトイレへ這った。
「がはっ、ごっ……!」
だが、いくら咳き込んでも、出てくるのは唾液と胃液だけで。
生理的反射で生まれた涙が、鼻の横を次々に伝っていく。
吐きたくない。
胃の中は空っぽのはずだ。
それなのに身体はまだ何か吐き出そうとしている。まるで内側から腹を蹴られているかのよう。
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