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無意識のうちに、足が動く。気づくと二人のあとを追いかけていた。
残酷なほどありありと見せつけられた現実を、さらに自ら求めた。
どんなに傷ついたところで、いまさら同じこと。
どうせなら、いっそ、もっと深くまで傷ついたっていいと思った。
二人は駅を出て、大通りを歩いている。
セーラー服姿の塩田まほの左手に、あの銀色は無い――と、思ったが、よく見ると右の人差し指で鈍く光っていた。
響はそれをどう見ているのだろう。どんなことを感じているのだろう。
彼女といる響は、俺の知っている響とは少し印象が違った。
もっと頼り甲斐がありそうというか、年上として男としてシャンと背筋が伸びているというか。
そんな姿を見るのは、初めてで。
「……ひび、き……」
彼の名が唇の間からこぼれてしまう。
もう見ていたくない。
それなのに、もっと見ていたい。
俺はそれからも心の中で何度も彼の名前を呼び、追いかけた。
気づかれぬよう物陰に潜みながら。
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