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「いくらなんでもそんな言い方しなくったってッ!」
眉間にシワを寄せ、涙をこらえているような――その悲痛な表情に、胸が痛む。
見ていたくなくて、俺は思わず顔を伏せた。
「たっくんっていつもそうだね。そうやって一人でなにもが抱え込んでさ」
「そんな、こと……」
「ダメだよ! 誤魔化したって隠したって分かるんだから。親友だからっ!」
「……っ」
「少しはボクに相談してくれたっていいのに――」
響は俺のことを、見てくれている。
ずっと前から。
ちゃんと、“親友”として。
嬉しい。
けれど、その一方で、“シンユウ”という他愛も無い言葉に傷ついる俺がいる。
「……バカが」
声になるのは、いつもの悪い口癖で。
「お前に、相談できることなんて、……あるわけがない、だろ……」
本当のことなんて何一つ言えない。
俺がいつも考えているのは、響――お前のことだけなのに。
「……そっか。そうだよね」
何も知らぬ彼は、まるで己をあざ笑うかのように肩で溜息をつく。
「ボクなんかじゃ頼りないんだ」
「ちっ、……ちがっ……」
「じゃあ話してよ! たっくんよりはバカだけどさ、話ぐらい聞けるのに」
自らを簡単におとしめ、こちらの言葉をうながしてくる。
響は、こういうところが優しくて、そして、ズルい。
「ねぇ、何があったの?」
「……ぐっ」
込み上げてくる感情は手のひらで握り潰し、息を吸う。
何度問われたところで同じだ。
真実など話せるはずがない。
けれど、このまま黙り続けているのはあまりに殺生だと思った。
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