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響はまた声を荒げる。
「どうして!? なんでそんなこと言うの!?」
一瞬にして目が覚めるほどの、声。
彼の胸の痛みがそのまま耳に流れ込んでくるようだった。
「ボクのことずっと嘘つきだと思ってたの!?」
――あ。
「そんなの酷すぎるよ!」
俺は、何を言ってしまったのだろう。
人の心なんて変わっていくものなのに。
昔の言葉にいつまでも引きずられて。とらわれて。こんなにも――。
バカ、みたいだ。
打ち明けたところで、どうにもならないのに。
やさしい彼を苦しませてしまうだけなのに。
「……悪かった」
溜息と共に、ゆっくりと立ち上がる。
目がくらむようだった。血の気が引くと共に視界の色は褪せ、世界は大きく横に揺れる。
足を踏み出したと同時によろけたが倒れるほどではなかった。
俺の世界は、とっくに歪んでいる。
その現実から目をそらすように、彼に背を向ける。
「……もう、全部、……忘れて、くれ……」
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