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「もっとちゃんと話してよ!」
一気に駆け寄ってきた響は俺の肩口を乱暴に、ぐっ、と掴んだ。
強い力で無理やりに振り向かされる。
「じゃなきゃ、全然――!」
彼は今にも泣き出しそうに顔を赤くさせ、俺の胸ぐらを掴み上げた。
弾みで、シャツのボタンがいくつか外れた。
「……え」
その手から、ふっと力が抜ける。
大きく見開かれた響の瞳に映ったもの。
一体なんなのか。
俺にはすぐ、分かった。
「どうしたの、……この、アザ」
分かっていた。
けれど、答えられるわけがなかった。
悲しくて、苦しくて、悔しくて、その手を振り切った。
彼の方は見ず、襟の乱れをなおし、走り出す。
彼はもう、追いかけてはこなかった。
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