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唇を強く噛んだ。
そうだ。
もう、終わりにしよう。
もう、諦めよう。
血がにじみ、鉄の味が広がっていく。
もう、捨ててしまおう。
楽になろう。
届かぬと分かりきっていたものに、手を伸ばしたのがそもそもの間違いだった。
俺なんかがずっと光の中にいたいなんて、高望みだったのだ。
こんなに愚かな想いを、今まで大事に抱えていたなんて。
本当に、バカだ。
これでやっと自由になれる。
もう何にも惑わされずに、苦しまずに堕ちていける。
もっと早く、こうしておけばよかった。
もっと、早く――。
ようやく楽になれたはずなのに、目頭からあふれる涙はいつまでも熱い。
頭の中では、振り払ってしまったことを悔やみ、何度も何度も詫びている。
悲しげに歪んだその顔に、どうしたらまた光が戻るのか考えてしまう。
「……ひび、きっ……」
どうしたら、その光をこちらに向けてくれるのかも――。
「……ご、めん……、響っ……」
諦めることなど、できるはずがなかった。
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