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(113頁)▼嘔吐有り
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覚えてる。
前にこれを食べさせてくれたのは、引っ越ししたての兄の部屋だった。
ケティも、一緒だった。
覚えている。
彼に初めて襲われたのは、その晩だったから。
よく、覚えている。
なにもかもが終わった後――たまらない罪悪感に押し潰され、胃の中のものをすべて戻してしまった。
あの日の兄のやさしさは、胃液と混ざり合い、すべて出ていった。
この心をあたためてくれることなど、なかった。
当然だ。
「――やっぱり、食欲無いか?」
急に声をかけられ、どきりとする。
意識が完全に過去へ飛び、いつの間にか手が止まっていた。
握ったままのスプーンには俺の上半身が逆さまにうつっている。首から上の部分にはちょうど光が反射しており、その表情までは分からない。
――おそらく、相当酷い顔をしているのだろう。
「いいぞ、無理しなくても」
こんな俺の目の前でも、兄はやさしく笑ってくれる。
「……っ」
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