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「……ケ、ティと……?」
不自然にその名を出され、兄はさらに目を見開いた。明らかに戸惑っているようだ。
一気に顔を赤くさせ「えっ、あっ」と、まごついている。
やがて返ってきたのは、
「……いっ、いいに決まってんだろ!」
――予想どおりの言葉だった。
「なに言わせんだよ、突然」
汗までかいているらしい。
首の後ろや頬をさすり、にやにやと照れ笑っている。
とても見ていられなくて、俺は目をそらしてしまった。
スプーンを置き、膝の上で、ぐっ、と両手を握る。
「最近、モデルさんとか色んな人と仕事するけどさ、その度に思うんだ。あいつが一番キレイだって……」
何も知らぬ兄は、ぽろぽろと胸の内をもらし始める。
まるで宝箱を開いてみせるかのように。
「オレには……、あの美しさは、とても作り出せそうにないから、」
そこで言葉を切り、肩で大きな溜息をついた。
うっとりとした、恍惚の吐息。
「たまに、怖くなるよ」
前に言っていた。
兄はケティの笑顔にたまらなく惹かれたのだと。
普段は気怠げに世界を見つめている切れ長の目が、ふっとほころぶ。
すると、まるで世界の全てが彼――彼女――を飾りつけるためだけに存在しているように思えて、胸がざわつくのだと。
「――って、ちょっと大袈裟か」
ケティのことを冗談っぽく語る兄は、本当に幸せそうだった。
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