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「はい?」
突然なにを言い出すかと思えば。
何が楽しくて、わざわざこんなヤツと顔を合わせなければいけないのだ。――そう言い返してやろうとしたのも束の間、
『気づいてるんでしょ、あのこと』
「……えっ」
思わず、情けない声が漏れてしまった。
『ゆ、び、わ』
たたみかけるように言われ、なんのことだか――と、しらばっくれることはできなかった。
『詳しいことが気にならない?』
――その指で輝く、銀色の光。
『駅前、東口のファミレス。待ってるから』
一方的に言い残し、切られてしまった。
「くっ」
――また遊ばれている。
もう一度溜息をつくと、猛烈な疲労感がこみあげてきた。
俺はどうも、尾津を相手にするとき異常なほど体に力を入れてしまうらしい。
少しでもバカにされぬよう心に鎧をまとうのだ。
だが、足掻いたところでムダである。向こうは隙間をかいくぐって攻撃をしかけてくるに決まっているのだから。
「……バカが」
物言わぬスマートフォンを睨みつけ、もう一度舌を打つ。
黒い画面に映り込んだ顔は、酷く怯えて見えた。
傷だらけのくせに必死で虚勢を張る臆病者がそこにいる。
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