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化の皮/引裂く(170頁)▼暴力有り
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「――今さら綺麗事かよ」
なにもかも蔑むように吐き捨て、胸の肉に爪を突き立ててきた。強い力を込め、おもいっきり。
「ぁあ、ああッ、あ……!」
“引っ掻く”なんて生易しいものではない。めりこんだ爪は、徐々に皮膚を裂き、肉をえぐっていくかのようで――。
「なんて美しい兄弟愛。互いを想い合って……ホント……、虫酸が走るッ!」
引き攣った肌と歪んだ爪が擦れ、ギリッ、ギチッ、と高い音を立てる。
「嫌いなのよ、そういうの……。アンタたち見てると生ぬるくて」
彼の手が通り過ぎた場所は、五本の爪の痕が赤く赤く腫れ上がる。
逃れたくて身悶えようとしたとき、ケティのほうから俺の肩を乱暴に突き飛ばしてきた。
「――っ!」
仰向けに倒れたところに白い脚が打ち込まれる。
「がっ!」
なんの覚悟も無く腹部に受けた衝撃は内臓を揺さぶり、猛烈な吐き気へと変わる。
込み上げた胃液の酸味と苦味が口いっぱいに広がった。
「……がっ、ぐ……、げほッ!」
「ねぇ、兄貴がそんなに大切なら、どうしてアンタはあたしに抱かれに来たわけ?」
「……っふ」
紅の髪を無造作にかきあげ、彼は態勢を立て直すと俺の腹に馬乗りになった。
「もっともっと、めちゃくちゃに壊されたいからなんでしょ……?」
身をかがめ、腫れ上がった胸の爪痕に舌と指を這わせていく。やさしく、ゆっくりと。
「いっ――!」
傷口に唾液が染み、指の腹で擦り込まれることで、耐え難いほどの強い痛みが生み出される。
「やっ、あ……うぅ!」
快感ではない感覚に全身が跳ね上がる。どうにかその激痛から解放されたくて、脂汗のにじむ頭を振り、手足をバタつかせるが、やめてくれるはずもない。
「もう何十回も裏切ってるくせに、アンタだけ逃げるなんて――」
俺の身体を見つめるケティの目は、今にも砕けそうなくらいに澄み、冷え切っていた。
「ずるいのよ」
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