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引裂く/さらす(173頁)
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◆ ◆ ◆
いつ、気を失ったかは覚えていない。
目を開くとケティの腕に抱かれていた。部屋は薄明るくなっていて、カーテンの向こうには太陽の気配を感じる。
遠くからヒグラシの鳴き声が聞こえた。いまにも消えそうなくらい、かすかに。
身を起こそうとしたが、思った通りに動くはずがない。あちこちが痛む。関節がだるい。肌はベタついて気持ちが悪い。
なにより、喉がカラカラだった。
水を求めてベッドから這い出ようとしたとき、
「――うっ!」
突然、後ろから髪を引っ張られた。
見るとケティの腕がこちらに伸びて、黒髪をぎっちりと握りしめている。
「逃げ……る、の?」
髪をむしり取らんばかりの力とは裏腹に、声は気だるげで、どこか寂しそうだった。
「ちがっ……」
「嘘。また、逃げる気、でしょ……」
彼は寝ぼけているらしい。
湿ったため息をもらして、まるで蛇のようにシーツを這い、俺の背中に乗り上げてくる。
「……なん、で、行くの?」
「違う。みっ――」
「なんで」
「水を」
「な、ん……で、なの」
そして気づく。今の彼は俺の言葉なんて聞いちゃいない。
ただ、泣き出しそうに不安をこぼすだけだ。
「どうして、ダメな、の?」
「……っ」
「ねぇ、……た……」
ちょうど心臓の上。そこにケティは耳をくっつけている。
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