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(178頁)▼暴力有り
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「――このッ!」
次の瞬間、兄の拳がケティの頬をおもいっきり殴りつけていた。
目の前で、赤い髪が舞う。
彼はバランスを崩し、そのままベッドから転げ落ちた。
倒れたところに馬乗りになり、その顔面めがけ、もう一度、拳を振り下ろす。
肉を越え、骨を打つような鈍い音。
それが繰り返される。何度も何度も。
「な、っ、……兄さ……っ! やめ、……!」
俺のかすれ声など届くはずもない。
兄は拳を止めることなく、ケティの方もぴくりとも動かず、ただ黙って報復を受け続けている。
「……もぉ、……や、め……」
俺はベッドの端から手を伸ばし、引き止めようとした。
「にぃ、……さっ……」
達したばかりのこの身体は鉛のように重い。軋むような全身の痛みをこらえながら、なんとか起き上がり、背後から兄の動きを封じようとした。
「拓海、兄さんっ……!」
やっとの思いで左腕を掴んだ瞬間、
「離せッ!」
兄は今まで見たことがないほどの気迫で、俺を振り払った。
よろめいたところに、コントロールを失った手の甲がぶつかる。右目の真上だった。とっさに目を閉じたのに、眼球が潰れそうなほどの衝撃を受けた。脳が、ぐわん、と大きく揺れた気がした。
「う、……」
なす術なく、床に倒れこむ。
「っ……、ぅあ、ぐっ、……」
あまりの痛みに震えても、抑えきれないうめきが嗚咽となっても、兄はこちらのことなど気にも止めない。
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