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「なんで逃げるの!?」
願いも虚しく、あっさりと追いつかれ、後ろから腕を掴まれてしまう。
「ずっと、探してたんだよ」
「……」
「部屋に、いなかったから……ずっと……」
俺の腕を掴んでいるその両手は冷たい。汗ばみ、細かく震えていた。
幻なんかじゃ、なかった――。
「どうしたの? ねぇ……、なにがあったの?」
「……」
「答えてよ」
ねじられるように腕を持たれ、身動きできぬ俺はただ、首を振る。
「ねぇってば」
「……」
「なにか、されたんだよね」
「――ッ!」
途端、胸の奥が引きつるように痛んだ。数秒間、まったく呼吸ができなかった。
透明な針が肺を突き破ったみたいに。
「やっぱり、そうなんだ……」
「……が、う……」
「嘘だ。だって、あの電――」
「離、――ッ!」
彼の手を強く振り払おうとした瞬間、兄さんの怒鳴り声と腕の力が脳裏をよぎった。
時が巻き戻ったかのように鮮明に。
「……離して、くれっ……」
結局は情けなく頼み込むことしかできなかった。
「もう、離して……」
顔をしかめると、右目がひときわ強く痛む。
「……お願……い……だから……」
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