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深みへ/雨の中(194頁)
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◆ ◆ ◆
激しい雨音で目が覚めた。
部屋はだいぶ薄暗い。時間は分からないが、まだ昼であるはずなのに――。
大きな雨粒が屋根やアスファルトを打つ音が聞こえる。
草木の上を滑り落ちていく音。
通り過ぎる車が水たまりを跳ねあげていく音。
雨どいからこぼれた雫が生む、タタン、タタン、という、穏やかなリズム。
かと思えば時折、遠くのほうで空がうねり裂けていくような、雷鳴も聞こえる。
その音たちは、何故か胸の奥の恐怖心を呼び覚まそうとする。
どろどろと波打った黒い感情は、意識の隙間から入りこんで、また俺を飲み込もうとしているらしい。
かすかに、呼吸の苦しさを覚えたときだった。
「……んんっ」
すぐ耳元で、声がした。
目だけを動かして見ると、あろうことか、隣で響が寝息を立てていた。
それはそれは安らかに。
「――っ!」
心臓がたちまち跳ね上がったものの、身体の方は少しだって動かせなかった。
「……すぅ……」
その両腕は、俺の左手にしっかりと絡みついてしまっている。
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