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彼は当然のように俺のもとへやってくるなり、
「龍広くんと一緒のほうが楽しそう」
と、笑った。
その表情があまりにもマヌケというか、へにゃっとしていたというか、隙がありすぎるというか。
とにかく――腹が立ったのを覚えている。
「ねぇ、一緒に帰ってもいいかな?」
「……勝手にしろ」
どうせすぐに飽きて離れていくに決まっている――。
それから、五年が過ぎた。
彼は今でも俺のそばにいる。
何より驚いたのは、彼が俺と同じ大学の同じ学部を受験していたことだろう。
俺より偏差値が低かったくせに、何食わぬ顔で合格通知を受け取った。
響にはそういう器用なところがある。
へらへらと誤魔化し笑いながら、「できない」と言いながら、あらゆることを難なく乗り越えてしまう。
そのくせ、
「龍広くんは、なんでもできて凄いなあ」
などと目を輝かせる。
俺は響とは違う。
結果が目に見えることしかやらない。
手が届きそうにないものは、最初から諦める。
ぶざまな姿など誰にも見せられない。本当の姿でさえも――。
「龍広くんは、本当に凄いよね」
彼に褒められる度、俺は臆病になる。
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