アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
瑶と潤と藤木「昼休み 2」
-
瑶は、言い訳しようとして、はっとした。もう隠さなくてもいいのだった。瑶は言い直した。
「最近、いっしょに帰ったりしてるから」
瑶は、みんなに見られて、きまりが悪く、もじもじしながら答えた。
「へえ、そうなんだ、いつから?」
「先週から」
「そういえば、朝もいっしょに来てたんだよな?」
「えっと……あ、ちょっと教科書」
瑶は、潤と藤木の二人が気になったので、みんなの質問を振り切って、教室を後にした。
潤と藤木は、廊下の壁際で立ち話をしていた。
瑶は、ロッカーの整理をするふりをして聞き耳をたてた。
「潤、あんな写真を送って来たりして、どういうことだよ?」
「写真?」
「土曜の夜に送ってきただろう? 電話番号も」
「ああ、あれは」
潤が気のない返事をしたとたん
「潤……」
と藤木さんがガバッと潤を抱きしめた。
「え?」
瑶は、驚いて棒立ちになった。
「あんな写真送ってよこして、どういうことだよ?」
藤木は、潤の身体を放して、潤の顔を見た。
潤の頬を片手で撫でながら、
「俺は、てっきり、誘惑されたと思ったんだが、違うのか?」
と言った。
「あ、ああ……」
藤木の指が、潤の乱れたシャツの中に入ったらしく、潤の返事が、喘ぎ声になっていた。
「こんな格好して。あの時も、誰かといっしょだったのか?」
「兄貴と……」
潤が悶えながら答えた。
「兄貴って?」
藤木の手が止まった。
「譲。上の兄貴」
藤木は潤から離れた。
「やられてたのか?」
「まあ、そんなとこ」
「それでか……」
藤木は、がっくりと肩を落とした。
「そんなことだろうと思ったけど、期待してしまった」
「あの写真見て、興奮しました?」
潤が、シャツの胸元を直しながら藤木を見てニヤリと笑って言った。
「あたりまえだろ……あんな……いやらしい写真……」
「どんな写真でしたっけ?」
藤木は、赤くなって、その質問には答えなかった。
けれど、
「あんな、いやらしい声、聞かせられて。おまけに、挿れてくれとか」
と電話のことを言った。
瑶は、森での行為を思い出し、胸がドキドキした。
「そのつもりで来てくださったんですか?」
「そうだよ」
「あーすいません。わざわざ。あの後、さんざんやっちゃったんで。今週は、ひどかったなあ、もう、あそこが腫れて、できないです。土日は、もう、あの後もやりっぱなしで、眠くて。そういうことなんで」
潤は、立ち去りかかった。
「おい、本当に平気なのか?」
藤木が引き止めた。
「ええ、間に合ってます」
「そうじゃなくて、兄さんに、そんなこと、されてるんだろう? あんな写真とられて送らされたり」
「俺が好きで撮ってもらってるんです」
「俺にあんな写真送ってよこしたのも、兄さんに無理やりされてたんじゃないのか? 兄弟でそんな」
「まさか。それにほんとの兄じゃないって言ったでしょ?」
「従兄だろうが兄だろうが、そんなことさせるなんて」
「俺が求めて、やりたいから、やってるんです」
「本当に、そうなのか?」
「もう俺に関わらないでください」
潤が藤木の手を振り切ろうと身体をひねった。
「関わるよ。気になるよ」
藤木は、潤の腕を両手でがっちりつかんだ。
「何でですか?」
潤は、むすっとした顔で答えた。
「好きだから。何度でも言うよ、潤が好きだからだよ」
「性的な意味ででしょ?」
潤は、あざ笑うように言った。
「違う」
「あなただって、あの時、いっしょになって俺を犯したくせに」
あの時? 瑶は、ロッカーから無意味に教科書を出して、揃えていた手を止めた。
「だから、償わさせてほしいんだ。あの時は、無理やり、させられたけど、もっと抵抗すればよかったんだ。俺の立場なら、もっと強く言えたはずなのに」
無理やりさせられた?
「無理でしょ、あの時のあなたはまだ二年で、三年が大勢いたんだから」
去年のこと、大勢?
あ、去年の文化祭で、潤が輪姦された話か!
藤木さんも関わっていたんだ?
無理やりさせられたって、潤と?
潤と藤木さんが、行為をしたってこと?
瑶は、怒りと嫉妬と悲しみで、もやもやした気持ちになった。
「あの時は、無理だったかもしれない。だけど、今からでも、俺は、潤を助けたくて」
藤木は言った。
助けたい?
藤木さんも、いっしょになって、潤を犯したのなら許しがたいけど、無理やりさせられたって言ってたよな?
無理やりさせられたなら、藤木さんも被害者?
藤木さんだって去年は、二年生だったんだから、三年生よりは、弱いわけで。
だいたい下級生に絶大な支持を受けて慕われてる人が、そんなレイプ野郎であるはずがない。
なぜなら、瑶たちの学校の生徒も、そうそうバカではないというか、辛辣なまでに人の欠点をあげつらって面白がるような悪童が多かったから、たいていの人は、何らかの、こき下ろしから免れ得ないのだ。
だから藤木だって、そんなレイプ野郎だったら、たとえ、その行いがばれずに隠されていたとしても、日ごろの言動や何かで、おのずとバレるだろう。
とにかく、瑶たちの目は、そこまで節穴ではないのだ。
皮肉屋で、理性的で、理論派で、冷笑的、シニカルなのが、瑶の学校の生徒たちの性格だった。
競争心が強くて、そうそう人のことは褒めたりしないのだ。
上級生といえども悪辣な点があれば、瑶たち下級生から支持なんて受けないはずだった。
そうか、校門で潤を待ち伏せしたり、瑶をパンで釣ってまで、潤と関わろうとしてたのは、潤を助けようとしていたのか。
潤が、藤木に校門で待ち伏せされて口説かれているのを見た時、潤が嫌がって逃げようとしていたので、てっきり、潤をいやらしい目で見ている人間の一人かと思い、追い払ってしまったけれど、そうじゃなかったのか。
瑶は、直感的に気づき、合点がいった。
瑶は、ロッカーから出した教科書を、またロッカーに収め、鍵をかけた。
孤立無援に思っていたが、この人も、潤の味方になり得る、というか味方だ、と瑶は気づいた。
「善人になりたいのかもしれないけど」
なのに、潤は、まだ皮肉な調子で言っていた。
「俺を助けるなんて、できもしないこと言われると迷惑なんですよ」
それはそうかもしれない。
潤は、誰かが助けてくれるのを待っているのだから。
そして何度も期待を裏切られ失望してきたのだ。
そんな風になっても仕方ない。
でも、できなかったのは、味方が少なくて、敵が強大だったからだ。
「期待させられるだけ、こっちも傷つくんで。じゃ、さよなら」
「いいかげんにしろよ、潤」
瑶は、思わず、我慢できずに言った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
70 / 252