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トモと昴とジュン「トモと木村」
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「セクハラって略した言葉は特に、『陳腐化』されてるよな」
木村は言った。
「陳腐化?」
「略した時点で意味の陳腐化が起こっているのかもしれないけど」
「セクシュアルハラスメントっていう原義より、意味が軽くすり替えられているってこと?」
「そう。セクハラと略せずセクシュアルハラスメントと言えばいいのかもしれないけど。でないと性暴力、性虐待、セクシュアルアビューズ、とか言わないといけなくなる。いや、それは、社会的な組織の中のという意味が抜けるから……」
俺は、木村の話を聞き流した。
どうして、こうなったかなあ、どこで、こうなったかなあ、と考えるたび、昴のせいになるのは、やりきれなかった。
同じ結果にしても、昴が手順を踏んでくれていたら、もう少し明るい気持ちで思い返せるのに。
昴が嫌いだったわけじゃない、むしろ好きだった。友人としてだ。だからこそ、ああでもしなければ、友人という壁を突き抜けられなかったのだとは思う。とりわけ、昴みたいな、屈折した意思の伝え方しかできない人間は。
それに、弟のジュン君に平気で性的なことをしながら育ってきたのなら、コミュニケーションの手段として、いきなり性的なことを、承諾もなく相手にすることを、悪いことだと知らないのかもしれない。
昴は、俺に好きだから付き合いたいと言ったけど俺に断られたというが、そこまで思いつめてのことだとは知らなかった。
昴に好きだと言われて断ったけれども、その後も友人として付き合っていたのだから、もう一度、説得するとか口説くとか……。
どんなに言葉で説得されても首肯しなかったかもしれないが。
かといって、ああいう性的侵害をするのは、どうかと。
昴は、今までも、ずっとああだったんだろうか?
性的要求を通す時だけでなく、今回の出がけの騒ぎでも、そうだ。
物を投げたり、泣きわめくことはないじゃないか。三歳児じゃないんだから。
俺は、昴のトラウマ解消役じゃないからな。
毎回こんなことになるのなら、互いのためにいいわけがない。
かといって、昴やジュン君を見捨てるのも可哀想だと思った。
彼らは、自分の身を売って、自分を救ってくれる人を探しているのかもしれない。
だが身を買う奴にろくな奴はいないに決まってるじゃないか。
それがわからないらしい。
俺だって、どうかわからない。
昴やジュン君とやるのは、今まで経験したことがないことだから刺激的で興奮して、当分、他の女なんか目じゃないって感じだ。
でも、飽きるかもしれないし。
とりわけ、出がけのようなことが続けば面倒で嫌気がさすだろう。
そんなことを、ぼんやり考えていると、木村がベンチに戻ってきた。
木村はドリンクを飲んでタオルで汗を拭いてから、
「どうした? また浮かない顔だな」
と俺に言った。
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