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潤と譲「倫子の病室」
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「な? 思いあたる節があるだろう?
とにかく、いったん、ここを出るぞ、いいな?」
譲に耳元で言われ、潤は、譲が開けたドアから、引きずられるようにして、倫子の病室を出た。
「なあ、潤、潤の気持ちもわからないでもないけどさ、あ、え?」
譲は言いかけて、潤が、ぽろぽろ涙をこぼしているのを見てあわてたようだった。
「潤? どうした?」
「わかってるんだ。俺だって、騙されてること。だけど」
潤は、唇が震えて、のどがつまって、それ以上言葉が出なかった。
「わかった。わかったよ」
譲が、潤の震える身体を抱きしめた。
「そうだな、潤からしたら、そうだな。お前、子どもだもんな」
「譲……俺」
「ん? なに?」
潤は、ゆるんだ譲の手を振り切って、さっき出た病室のドアを開けた。
「おい、やめろ」
譲が潤を引きとめるより早く潤は叫んだ。
「倫子さん! 俺、倫子さんのこと好き!」
「ばか、言うなって言ってるだろ」
譲の手が潤の身体を病室から引きずり出した。
潤は、ドアにしがみついた。
「おい、潤。ドアをはなせ」
潤の目から涙が流れた。
「潤、いい子だから。離して」
その昔、竹秋と千代子の棺に取りすがって泣く潤を、引き離したのも譲だった。
「つらいから、やめてくれよ。お願いだから」
譲は、おそらく、かつてもそうだったように言った。
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