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特別な存在2
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僕はふと今日会うであろう、一人の人間を思い浮かべる。
ある意味、僕の中にいる唯一の特別な人物だろう。
ただし良くない意味で。
僕は慣れない通勤電車の中で、ため息をついた。
あぁ、そうだ。
名古屋には、アイツがいるんだった。
忘れていた。
いや、考えないようにしていた、が正しいか。
三枝侑史(さえぐさ ゆうし)
僕の同期でもあり、出身大学も同じである、旧友だった人物だ。
今は名古屋支店の開発課の課長。
僕と同じく、いや、僕以上のスピードで出世街道を駆け上っている。
元々は仲の良い友人の一人だった。
大学では学部は違ったけれど、共通の履修講義では、お互いに切磋琢磨して試験対策に励んだこともある。
学内から同じ会社に就職すると決まった時も、共に喜んだし、内定者説明会にも一緒に脚を運んだ。
一週間、缶詰の新人研修も同室で過ごした。
ようやく終わりだと思った、最終日。
三枝と僕は関係をもってしまったのだ。
勢い?
流れ?
雰囲気?
多分お互いにそんなものだったと思う。
今なら、一週間缶詰でお互い溜まってたとか。
最終日の打ち上げで飲んだ酒のせいだとか。
何かしら言い訳も思いつきそうなものだけど。
次の日の朝、混乱した僕は逃げるように家路につき、元々名古屋出身の三枝は名古屋支店に配属され、それ以降6年間、連絡は勿論、一度たりとも三枝と顔を合わせていない。
あの日の出来事は、ただでさえ彼女いない歴=年齢な僕の人生の、ある意味最大の汚点だ。
悪夢であり、黒歴史でもある。
四半期ごとに開催される同期会も、三枝が参加するときは適当な言い訳を述べて参加しないように気をつけていた。
でも、もう避けられない。
僕は名古屋に来てしまったし、開発と営業は意外と関わりがある部署でもある。
仕事をうまく回すためには不可欠な存在だ。
向こうがいっそ酒のせいで忘れてでもいてくれたら、どんなにいいだろうか。
そんな願いを胸に留め僕は新しい職場へと向かった。
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