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社報
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「悪い、待たせたか?」
「いえ、お気になさらず」
約束の時間を10分を過ぎた所で、三枝は通用口に姿を見せた。
スプリングコートを纏った姿は長身が更によく映えてみえる。
いい仕立てのコートだなぁ。
「20時に店を予約してるんだ。歩いていっても十分間に合うから、歩きでいいか?」
「構わないですよ」
「ん。じゃあ、歩きながら行こう。ついでに道中にある使える店は教えてやれるし、丁度いいよな」
「お願いします」
僕が軽く頭を下げると、三枝は「なんだよ、お前そんなキャラだったか?」と茶化す。
おそらく、敬語で話すことを指しているのだろうけど、僕が三枝にとって、どんなキャラでいたのか。
正直思い出せない。
しかし、当然そんなことを素直に言っては機嫌を損ねるに決まっている。
「もう、これは職業病かも」
そう言って笑って見せる。
多分、この答えが一番なのだ。
「あー、お前営業成績めっちゃいいもんなぁ。たまに社報に載ってるの見てたよ」
社報。
言われて久しぶりにその存在を思い出す。
新入社員の紹介や、社員の結婚や出産、お悔やみなどの情報が掲載され毎月一回発行されている。
優秀な社員を紹介するコーナーもあり、営業成績がよかった時に何度か掲載された覚えがある。
ただ、僕は社報を殆ど読まないので、自分の記事すらも、しっかりと読んだことはない。
「僕、自分の記事は見てないままだなぁ」
「そうなのか。今度見るか?多分データならあるぞ?」
「え?」
「社内のデータバンクに多分過去の社報記事は15年分くらいファイルが残ってる」
「そ、そうなんだ・・・?」
別に見たいとは微塵も思わない。
けど、その申し出を無下にも出来ず「そのうち機会があればデータバンク覗いてみるよ」と、答えるに止めた。
三枝は僕があまり興味を示さないと分かったのか、短く「おう」とだけ返事をくれた。
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