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共同作業 1
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「あ、ここ。この駐車場の8番に停めて」
僕の指示に三枝は上手にハンドルを切って駐車する。
眼前には僕の住み始めたアパート。
三階建ての一番上の角部屋が僕の部屋だ。
駐車場は一部屋に一つ勝手に付いてくるシステムで、割り当てはあるけれど、まだ車を所有していない僕には無用のものだと思っていた。
まさか引っ越し早々使う機会があるとは。
「ありがとう、送ってくれて…」
こういう時、恋人同士ならどうすべきなのかを考える。
そのままサッと降りて帰っていいのだろうか。
家に寄って貰う?
けど、もてなすものなんて何も無いし…。
そもそも今の部屋の現状を思い浮かべると、人を招き入れられる状態ではない。
キスやハグをする気にもなれない。
あれはドラマや漫画の中の話だろう?
「蒼汰、どうした?」
悩んでいる僕を不思議に思ったのか三枝が声をかけてくる。
「あ、いや…。三枝はこの後どうするんだ?」
「これといって用事は無いから、家に帰るだけだ」
「そう…、あ、あの、寄って行く?といっても引越したばかりで何もなくて…。お茶すら出ないんだけど」
三枝は少しばかり考えたのか間を置いて「引越しの手伝いさせる気だな」と笑った。
「いや、そういうつもりじゃなくて、こういう別れ際とかどうすべきなのか分からないから…」
引き留めたいわけでは無いという、おそらく三枝にとっては嬉しくない感情からの誘いであることを素直に打ち明けると三枝は優しく笑って頷く。
「付き合い方は考えるって言ったろ?無理するな。引越し作業で人手が欲しいなら手伝ってやる。もし、そうでないなら今日の所は帰るよ」
「…そりゃあ人手は助かるよ。まだ部屋は段ボールの山だからね。けど、昨日からお世話になりっぱなしじゃないか」
「じゃあ昼はお前の奢りな」
三枝はそう言うと、エンジンを切って車から降りて行く。
「ほら、蒼汰、早く」
そう急かされ慌てて僕も車から降りた。
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