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朝_4
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自分の部屋に帰って一息つくと、体中が重くて座ったら立ち上がれないような気がした。
慌ててアイロンをかけておいてあるシャツを手に身支度を整えようとそのまま洗面台に向かった。
鏡に映った自分の姿にぎくりとする。
首の付け根に真っ赤に腫れた肌が見える。
これは、きのう何度も歯をたてられた箇所。か…
ため息をついてシャツを一度脱いで、薄手のタートルを下に着込む。これで一応は見えないだろう。
優也さんは一体何を考えているんだろう。
相手に不自由している訳じゃないだろうにどうして、僕なんかに目をつけたんだ。
__本当に戻るつもりでいるのか?会社くらい一人で行けるだろう。お前はヒトと関わりを持っちゃいけないんだよ。わかっているだろう。__
陰が囁く。
全くその通りだ。一晩おかしかったから、正しい判断ができなかったけど。
さっきまでが昨日の夢で、現実に戻って考えれば関わらないのが一番いい。
このまま戻らずに駅に向かおう。
まだ今日は始まったばかりだし、この時間に出勤すればいつもと変わらない一日がやってくる。
玄関を出て鍵をかける。
そのまま階段を降りて歩き出す。なんとなくやましい気がして優也さんのマンション前で小走りになる。俯いて走り出したから目の前に人がいる事に気付かなくてぶつかった。
「す、すみません」
「やっぱりな」
ぶつかったのは、にやにやと笑う優也さんだった。
駐車場はマンションの裏側。僕がいるのは表玄関側だ。
僕が逃げるのを予想していた?
がっちりと手首をつかまれて連行される。
連行。が正しいくらいの強さで引きずられ、歩かされる。
少し先で黒い高級車のランプが光る。
助手席を開けて押し込められて。
自分はぐるりと回って運転席に滑り込む。
見かけによらないスピーディーな動きを目で追っていると、優也さんは僕に微笑みかける。
「戻ってこないのわかってた」
あまりに微笑みが美しくて。みとれている自分にハッとする。
気まずい思いで俯く僕を満足そうに見ながらエンジンをかけて滑らかに車を動かす。
「ほら、見てみろ。あの入り口に立ってる大男。」
駅の入り口。人の行き交う中にじっと立っている身長の高い男。
誰かと待ち合わせだろうか。こんなに人の多い時間帯にあんな入り口で待ち合わせなんてなかなか難しいと思うけど。
「わからないか。昨日の痴漢だよ。お前をさがしてるんだろう。」
ぎょっとした。
同じ駅から乗ってきていると考えた事はなかったのだ。
「もう少し自分を大事にしろ。どこの誰ともわからない他人につけこまれるような隙をつくるもんじゃない。」
「はい。すみません。」
痴漢に遭うのは自分のせいではないんだけど
明日からは電車の時間を変えよう。
「会社は何時までだ。帰る時に連絡をいれろよ。」
運転中の優也さんはまっすぐ前を見ながらそう言う。
「一人で帰れますから。」
僕はこれ以上この人に関わりたくない。
惹かれている事を自覚しているから。
早く離れてこれ以上、この人の近くにいたくない。
近寄らなければ嫌われる事はないんだから。
今のまま、少し知り合っただけのまま
そっとしておいてもらいたい。
「お前は俺のものだと言ったはずだ。そんな我が儘は聞けない」
「そんな事勝手に決める優也さんの方がよっぽど我が儘です。僕にもうかまわないでください」
強く言ってしまったこの沈黙に少し後悔した。
車の中では逃げる場所なんてない。昨日そう教えられたばかりじゃなかっただろうか。
そんな事言って相手がもしも逆上したら…
ガクリとブレーキをかけられて車が路肩に止められた。
「へえ。逆らうの。やっぱり今朝、抱き潰しておけばよかったな」
しまった。
と思った時には既に遅くて、座席にガンっと頭をぶつけられて唇を奪われる。
「んんっ…っやっめっ」
下唇を啄まれ、隙間から舌を差し入れられ掬い取られる。
昨夜からこの刺激がもたらす快楽を知っている体はあらがえずに、突き放そうと優也さんの肩を掴んでいた手から力が抜ける。
「はっ、あっ、んっ…」
舌を強く吸われて新しい刺激に体が反応しそうになる。
どれだけあさましくできているんだ。この体は。
舌打ちしそうになっている僕の瞳を間近で覗き込んで、額を長い指で弾く。
「わかったな?迎えにくるから必ず連絡をするんだ」
言いながら僕の胸ポケットから携帯を抜き取り
「番号登録しといたから」
優雅な仕草で胸ポケットに戻される。
僕を振返ったその顔を見て、絡めとられてしまったような気がしていた。
よくない兆しを自分の気持ちにみつけて、嫌な予感しかしなかった。
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