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誤解2
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動いたら音がしそうなくらい張り詰めた空気。
他人に触られそうになって体が動かなくなって
それで、抱きしめられて安心してる。
おかしい。
この人だって他人、だ。
なのにこんなに、居心地いい。
セックスって人を解すような力があるんだろうか。
その相手に嫌われないようにするにはどうしたらいいんだろう。
震えの止まった体を預けて目を閉じる。
「やめなよ優也。そんなの似合わない。」
張り詰めた空気を破って美人が笑い出す。
どこがどう面白かったのか迫力美人はクスクス笑い続けながら、僕の肩に回された優也さんの手を取って自分の唇にあてる。
ひんやりした汗が背中を伝った。
この2人は、そういう関係。
無言で言われてるような気がして。
頭が冷えてくる。
_だいたい、オマエがここにいる事が間違いだろ_
そうだよね。そうだったね。
何を激しく勘違いしていたんだろう。
情事の中でだけの話を本気にしたりして、子供じゃあるまいし。
「離せ」
低い声が響く。
ギクッとして慌てて、いつの間にか握りしめていた優也さんのシャツから手を離す。
「アヤ、ちょっとこい。」
「はーい」
ぺろり、と赤い舌をだして見せつけるようにその指を舐め上げた。
そのまま手を引いて2人が立ち上がる。
しゃがんだままの僕はどうしたらいいかわからなくて、ため息をつきながら部屋を出ていく優也さんを見送った。
「僕がきたから君にはもう用は無いよ。」
すれ違い様にボソリと呟くその冷たい笑顔。
さっさと帰れ!
そう言われている。
頭がガンガンして、吐き気までしてきた。
そんなにショックを受ける事じゃないはずなんだけど。
人生の中では、もっと酷い出来事がたくさんあった筈。
思い出そうとしても思考が追いつかないのか何も浮かばない。
さっき見ていた2人の後ろ姿が頭から離れない。
並んでいたその姿はまるで雑誌から出てきたカップルみたいだった。男同士では何て言うのかわからないけど。
帰ろう。
自分には似合いもしないのに幸せな夢を見過ぎた。
ぼやりしながら後を追って部屋から出た僕は、キッチンで楽しそうにはしゃぐアヤさんを見て
少し、ほんの少しだけ羨ましくなった。
あんなに綺麗な人と付き合っていて、どうして僕になんか手を出したんだろう。
助けてもらって優しくされて勘違いをして、あげくにあんな行為…
自分が恥ずかしい。
あんな嘘、つく必要なかったのに。
ヤリたい。って言われた方がよかった。
思いがけない優しさが気持ちの隙間に挟まってズキズキする。
僕の視線に気付いたアヤさんが、僕に背中を向けて優也さんの前に立って顔が近付いていく。
キス、するつもりなんだ。
僕は、用無し。そうだよね。
見ていられない。
玄関に向けて走り出した。
廊下に置き去りだった鞄を抱えて靴を履いて外に出て、自分の部屋までダッシュして向かう。
こんなに走ったのいつ以来だろう。
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