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不調
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アラームが鳴ってる。
早く止めないと…
体が重い。起き上がる気力が出ない。
どんな心境でも何が起こっても時間は過ぎて朝は来る。
わかりきっている事だけど大人になると、それが耐えられない程つらい日がある。
二日酔いの次の日と、体力の限界を感じている今朝みたいな朝だ。
尋常じゃなく体が痛い。
一晩しっかり寝たはずだけど、回復の気配すらない。
アラームをつかんで布団の中に引きずり込み、ようやくその騒音を止める。
なんとか布団からはい出して立上がるも足元がフラフラする。
冗談抜きで、運動しないと…
昨夜よりも頭痛がひどくて、歩いていると響くように関節が痛む。
あまりの痛さに笑ってしまうほど。
なんだろう、これ。
体調悪いな。
まだ水曜日。
月曜休んだ事と、昨日の出来事を思い返したら更に頭痛が重くなった気がする。
でもここで休んだら、果てしなく会社に行きにくくなるだろう。
自由に生活していくためには会社をクビになる訳にはいかないのだ。
何とか身支度をして、いつもより早目に部屋を出る。
最寄り駅に向かうには優也さんのマンション前を通る道しかない。
駅にはいつもの痴漢がいる。
だったら反対方向に向かって一駅先まで歩こう。
そうすれば、どちらにも遭遇しないで会社に行けるはずだ。
都心に近いこの地域では一駅歩くといってもさほど距離はない。
馬鹿みたいに高い駐車場を借りて、値上がる一方のガソリンを入れて車を所持しているより
定期券を買って維持費のかからない公共の機関を使った方が安上がりなのだ。
貧乏人の言い訳と、高級車で通勤する優也さんへの反発。
ダメダメ、その名前はもう忘れたはずだったんだ。
だいたい都内での一人暮らしなら、車なんてそこまで必要な物じゃない。
食料品のまとめ買いをする訳でもデートする訳でもない。
たまに社用車に乗せてもらうと、どの時間帯でも都内はうんざりするほど渋滞する。
最寄り駅まで歩いて30分以上かかる実家で生活していたらそうもいかないだろうけど。
今生活している部屋は、いつも利用している最寄り駅まで徒歩5分。
今、向かっている駅まで徒歩6分。
つまり駅と駅のちょうど真ん中くらいの位置に部屋がある。
どっちの駅を使おうと特に変わりはない。
気温はそんなに低いわけでもないのに、途方も無く寒くて背中を丸めて歩く。
いつもより1分違うだけのはずなのにやたら遠くに感じる。
今日は本当に会社に行きたくないっていう証拠なんだろう。
昨日の上司の行動はひどかった。
あれを改善してくれないとまともに働けない。
お願いだから、あんな事はもうやめて欲しい。
一体どんな恨みがあって僕にあんな事をしてきたのか見当もつかないけど…
しばらく書庫に一人で行くのはやめておこう。
昼休みも社外に出た方がいいかもしれない。
時間を見ようと携帯電話を取り出す。
着信34軒
目を疑った。
そして全ての着信を消去し、サイレント設定をして鞄にしまい込む。
僕は今、何も見なかったんだ。
今週もいつもと変わりなく通常通り過ごせるはず。
少し違うのは周りを見て動こうと決めた事。
理不尽な痴漢やセクハラにあったり、意味も無く誰かの恋物語に巻き込まれたり
しないように。
誰とも関わらないから、誰も近付かないでください。
そう願って過ごす事を思い出した事。
年を重ねたからって人の本質はそう簡単に変わらない。
たった2日間思い出さなかったからって、何かが変わった訳じゃない。
誰とも関わらないようにする為に僕はここまで逃げてきたんだから。
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