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パニック_2
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ピーンポーン、ピーンポーン
ドンドンドン
扉を外から誰かが叩いている。
「警察です。開けてください」
「はあっ?警察?」
河野さんが間抜けな声を出した瞬間
バターン
と扉が開いた。
「離れろ」
そう聞こえたのと同時に河野さんの姿がベッドの下に大きな音をたてて転げ落ちる。
飛び込んできたのは真っ黒い獣。
何が起きたかわからないまま落下して目を白黒させている河野さんを、長い足で蹴り上げてベッドの反対側に転がす。
そして僕の体に自分の着ていた上着をかぶせて両腕のロープをほどく。
「おい、そいつ連れて行け」
後ろから入ってきた人に指示を出すと
僕は無言のまま抱き上げられてそのままバスルームに連れて行かれる。
体はガタガタと震えたままで、体もうまく動かせなくても、この人が優也さんだって事はわかっていた。
「うがい、させて、ください。」
震える手でコップに水を入れてうがいをして、それでも足りずに蛇口から流れる水をそのまま口に含んで吐き出す。何かが口に残っているみたいでそれが自分を蝕むような気がして。
「よせ。もう大丈夫だから。愁ごめん。遅くなった。」
ぐいっと後ろから腰を掴まれて勢いよく倒れた僕は暖かい胸の中に抱きとめられた。
優也さんの匂い。
どうして、どうして僕はいつもこんなにも駄目なんだろう。
前を向こうとすればする程、こんな事に足を取られる。
僕が弱いから
僕が醜いから
神様に嫌われているから
どうすれば普通に暮らせるの。
どうすれば普通の人と同じになれるの。
どうすれば、この人に嫌われないですむの。
「ゆう、や、さん。ごめんな、さい。僕…ごめんなさい」
呟く僕と一緒にしゃがみこんだ優也さんは膝立ちになった僕をきつく抱きしめて言った。
「愁、もう大丈夫だ。2度とこんな事にはならないから。俺がお前を守るから。」
「…いで…」
優也さんがいる。その安心感だけで涙がとまらなくなって視界は真っ白になってしまう。
「愁?」
「すて、ないで、ください。ごめんな、さい。」
もともと汚れてしまっているけど、優也さんの彼女みたいに美人じゃないけど
側にいられる希望をとりあげないでください。
「な、に言って、…俺はお前を、棄てたりしない。愁じゃなきゃ、だめなんだ」
どうしてそんなに泣き出しそうな声をだすの。
優也さんが泣くなんて、そんな事絶対にイヤなのに。
そっちの方が心配になって僕の涙は少しずつとまって目からこぼれなくなった。
定まってきた視界が優也さんの悲しい顔を捉える。
こんな表情して欲しくない。だって綺麗な顔には似合わない。
抱きしめられたまま、優也さんの頬を両手で包んで僕は無理に微笑む。
この笑顔は、優也さんが褒めてくれた笑顔のはずだ。
きっと一緒に笑ってくれる。
「泣か、ないで。笑ってくだ、さい。迎えにきてくれて、ありがと、ございます。」
そう言った僕を驚いた顔でじっと見つめて、眉を寄せて少し笑って、そして思い出したように抱き上げられた。
「帰ろう。お前、熱あがってる」
睡魔と戦いながらも優也さんにしがみつく。
僕は、優也さん達が持ってきたタオルケットにぐるぐると包まれて抱えられたまま運ばれている。
一緒に部屋に入ってきたのはやっぱり奏介さんだった。
車の後部座席に乗せられて優也さんの膝枕に寝かされる。
「薬の種類は何だ」
「残った分から推測するとロヒプノールかと。一晩眠れば体に支障はないはずです。」
運転席の奏介さんが冷静に答える。
「突然こんな事が起きるなんて誰かの手引きがあったとしか思えない。愁の事を知っている者は多くないはずだ。」
「正式な発表も待たずに手を下してくるなんて何を焦っているのでしょうか。愁くんの警備はしばらく念を入れた方がいいでしょうね。」
僕はまた、迷惑をかけてしまった。
もう少し気をつけていれば避けられたかもしれないのに…
「乱暴に、されないと、感じない、淫乱、だって、誰かに、そう、言われたって」
少しでも何かの手掛かりになりそうな事を思い出そうとするけど、目を開けているのが精一杯で。
体も本格的に痛くてどうにもならない。
「思いだすな。もう眠っていい。お前は何も心配する事ない」
僕が心配しているのは優也さんの事だ。
こんな事で心を痛めて欲しくない。
「GPS、ありがとう、ございます。僕、平気です。優也さんの、せいじゃ、ないです」
もっと話したい事があったんだけど。
もう限界だ。
眠い…
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