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苛立ち_優也4
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戸惑った表情に涙を浮かべた愁の両腕をベットに縫い付ける。
怯えて疑心暗鬼になっているんだろう。それとも、危険だと気付いて逃げようとしているのか。
どっちにしても。そんな顔させるために決めた事じゃない。
守れなかったのは俺のミスだ。
危険がある事の説明不足については謝罪も必要だと思う。その上で秘書室にやっぱり入りたくないと言い出したら、1から説明し直すだけだ。
でもそれも全部後回しでいい。
今は、何も考えさせちゃいけない。
俺の事だけ見ていればいいんだ。
それが今だけだって構わない。
繰り返し繰り返し、それに慣れるまで根気強く教えてやる。
柔らかい唇に触れる。
頼りない感触。少し力をこめて押さえつければ動けない体。
これを同じように誰かが触れたと思うと怒りがこみあげる。
これも嫉妬の一種なんだろうか。
だとしたら、どうしようもないな。これは。
自分の子供っぽさに呆れてしまう。
「優也さん」
押さえつけられたまま見上げてくる愁は、いつの間にか笑顔を見せていた。
「良かった。笑ってくれた。もう、見られないかと思った。…これで、大丈夫。満足、です。僕これで失礼します。」
大丈夫、満足って?
「なにが。」
潤んだ瞳で見上げるその顔だけ見たって、熱が上がっているのがわかる。
大丈夫じゃあないだろう。
少なくとも俺は大丈夫じゃない。
体調を考慮して片手を離して足下の毛布を引っ張り上げる。
自由にされた愁の片手が俺の手を掴む。
「帰ります。」
…?
「帰れるわけないだろ。」
小首を傾げたまま動作を止めて、何か考えているようだが熱で火照った顔と艶やかな唇でそんな素振りをされても誘われているようにしか見えない
「大丈夫、ですよ。」
繰り返す愁。
何だかわからないけど、何もわかっていない愁にイライラする。
「だからなにが。」
「出向期間が終わったらどこかに引っ越して会社も辞めます。今日の事は忘れますから。」
だからそれまでは隣にいさせてください。
もしかしたらそれは、独り言かもしれないくらい小さな声。
それは俺の耳に吸い込まれて、自分のもやもやした気持ちを直撃する。
素直にずっと一緒にいたいと、どうして言わないのか
どこでどうこじれて、自分勝手に消えようとしているのか
だいたい、愁は俺の事どう思っているんだ?
そういえば一度も聞いていない。
聞かなくても態度でわかる。そう思っていたけど
こんな時にまで強がっているのを見ると本心はどこか別の所に置いてきているようにさえ見える。
確認しないでいたのは、自信がないから?
拒否されるかもしれないと思っているから?
自問自答してもよくわからない。
俺は愁を離したくない。
それだけだ。
それはきっと、言葉にしてやらなければ理解できないだろう。
「俺はお前を手離すつもりはないんだぞ。勝手に離れるのを許すと思うのか?」
きょとんとした顔で見上げる愁。
だめだ。これは完全にそう思ってたな。
自分さえいなければいいと、勝手に…
「でも、僕がいたら迷惑が」
「お前がいない方が迷惑だ。」
きっぱり言い切って肩を掴む。
起き上がりかけた愁を、そのままベットに押し倒す。
耳を甘噛みしながら、体で愁が起き上がろうとするのを阻む。
「俺は執念深いんだ。お前が逃げるつもりなら容赦しない。」
「優也さん、でも」
馬乗りになった状態で愁の唇を指でなぞる。
「聞きたくない。俺の聞きたい言葉だけ言え。」
これじゃ意味がわからないか?
「一言でいい。俺の事が好きだと、この口で言ってくれ。」
焦げ茶色の瞳をいっぱいに広げて、そこに涙がたまっているのが見える。
涙がこぼれないようにしているのだろう。
潤む瞳に俺が、俺だけが反射して映されている。
たったそれだけの事で小さな優越と安心感に包まれる。
ふるふると小さく揺れているのは怯えじゃない。
指を吸い込みそうに柔らかい唇も、じっと見つめる澄んだ瞳も
こんな悲しい顔をしていても俺の目を惹き付けて離さない。
これはワザとじゃない。天性のものだ。
魔性だな。
男が男相手にこれだけ色香を放てる事に圧倒される。
無意識にこれだけの事をやってのけるのだから、放っておけばひっかかるバカが必ず出るだろう。
昨日、今日みたいな事がこれまで起きなかった事に感謝するべきだ。
起きなかった、かどうかは怪しいものだけどな。
俺はとんでもなく護衛の大変な相手を選んだのかもしれない。
「守ってやれなかった俺にもう用は無いか?」
愁がそんな事考えているはずないのはわかってる。
そんなことないと言わせたいだけだ。
小さく首を横に降った事で、瞳にたまった涙がこぼれて
ズキンと心臓に、鈍い痛みが走った。
こんな事をした首謀者を決して許しはしない。
俺の物に手を出した事を必ず後悔させてやる。
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