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暗い夜 優也_3
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待っている間、写真を片手に報告書を読む。
結果を急がせたくせに、写真に目を奪われて全文をまだ確認していなかったのだ。
母親は南野香織。
私生児で父親は榎本尚之と思われる。榎本は婿養子で当時8歳の嫡男、榎本夏彦との3人暮らし。
世間知らずな大学生だった香織は就職活動中に知り合った榎本に愛人として囲われ、紹介されるままに下着姿で接客をするランジェリーパブで働き、日払い給料のほぼ全額を尚之に渡していた。
妊娠を機に水商売を辞め、子供を産んだ後に榎本総合病院に入院。
理由は両足首を切除する大怪我とされている。
退院後の香織の生死は不明。失踪人として届け出されている。
榎本尚之によって足を砕かれ、自宅の離れに監禁されていたと噂されるが、本人は否定。
香織の両親に育てられた南野愁は高校入学と同時に榎本家に引き取られる。
地元の高校から有名な進学校への編入試験も高得点で難なくクリアし、それ以降常にトップクラスの成績を修める。
中学時代まで親しんでいた剣道をやめ、高校生活の3年間は体の弱い学生として通学。
体育の授業はすべて見学。真夏でも長袖を着て肌を露出するのを避けているようだった。
その行動から、暴力や虐待、もしくは性的暴行をうけていた事が考えられる。
親しい友人はおらず、部活動の所属はなし。推薦でどこの大学も狙える程の頭脳がありながら、進学を希望せず高校卒業後、就職を理由に家をでる。
それから都内を点々としたそれぞれの住所。
いくつも掛け持ちしたアルバイト先、それから就職した今の会社。
どこの勤務先でもトラブルを起こした事はなく勤務態度も良好。
ゲイの発展場に出入りしていた時期と好みのタイプ…俺とは似ても似つかない好み。
まさに当てはまる奴が身近にいるが…
都内での生活ぶりについて不審な点はない。
それ以前の暮らしぶりについて詳細不明な箇所があり、探偵会社はそれを気にしていた。
調査に妨害が入っているとしか思えないが、理由がわからない。
権力者の血縁…病院経営者の父親というだけでそれには当てはまらないだろう。
どこかで力のある何物かと関わった…とか。
そうだとしたら怪しいのは詳細不明な空白期間。
高校卒業前の約半年。
一切の目撃もなく、登校もしなかった事から家にはもういないと思われていた。
ところが愁が実家を出たのは卒業式の次の早朝。
昼前に都内の不動産屋で即日入居できる部屋を借りた事がわかっている。
10代だった愁は身元保証人の名前に母親の名前を書いている。所在を知っていたのだろうか。
引き取られてからの事は、明らかにナツヒコが関わっているだろう。空白期間についても知っているに違いない。震えている愁から聞き出す訳にもいかないだろう。
が、もう二度と会いたくないし、接触させたくない。
黙ったままでいよう。俺が気にしなければいいだけの話だ。
結局、愁がどんなでもいいから側にいたいだけなのだから。
報告書を読み終えた俺は、これ以上待つ自信がなかった。
荷物をまとめさせる時間さえ惜しくなったんだ。
すぐにでも体中を確認しなければ気が済まない。
他人に触れられたままの愁の全身を今すぐにでも…
ここまで独占的が強いとは自覚した事はなかった。
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