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暗い夜 愁_8
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「愁くーん?お風呂かな。覗いていい?」
からりと乾いた声がする。
その声に安心して力が抜ける。
「いい訳ないだろ。ちょっと待ってろ」
裸のままの僕を慌てて拭きながら優也さんが対応する。
「奏介さ、ん」
安心した声を出すと優也さんは乱暴に僕からタオルをはぎ取って顎をつまむ。
「そんなに嬉しいか?俺だけ見てろよ。心配させるな」
澄んだ瞳が僕を真っ直ぐ捕らえて、唇を啄む。
目を閉じるタイミングを逃してしまって、至近距離で見つめてしまう。
「心配、ですか?」
手を離して服を着込む優也さんの背中に声をかける。
心配って、そんな風に思ってもらう理由なんかない。
「…そうだよ。愁の事、鎖で繋いで部屋から出さないようにしたいくらいに心配だ」
「え…」
それはまた、例え話にしても強烈な心配だな。
でも、そこまで心配してもらえる事なんて、これまでもこれから先もないだろう。
そっと手を伸ばして、シャツを着た優也さんの背中に縋り付く。
触れた所から、凍った心が溶けていくみたいだ。
優也さんが、この人の存在が、たった数日で人生観を変えてしまうほど大きくなっている。
少し恐くもあり、くすぐったいくらい嬉しい事でもある。
抑える事ができない程に触れたくて、触れられたくて。
そう言ってしまったら壊れてしまいそうで。
何もかも曝け出せたらラクなのかもしれない。
でも、嫌われたくないから。
僕からは何も言いたくはない。過去の出来事を消せる日はこないのだから。
せめて、ソレから遠ざかれたらそれでいい。
「それも、いいですね」
「ば、ばかっ。お前、本気にするぞ。」
優しいこの人は、きっとそんな事できない。
でも、僕は…
監禁されて酷い事をされても生きてきた。自分で死ぬ勇気もなく、ただ生かされていた。
そうして生きながらえたからこそ、この人に出会えた。
同じ監禁される、でもこの人にされればきっとそれは夢のような時間になる。
ぎゅっと背中に腕をまわしたら、唇が降ってきた。
「愁、俺はお前を絶対に守るから。どこにもいくなよ。」
「逃げたら、鎖で繋いでください。どこにも行きたくなんてありませんから」
優也さんはそう言った僕の唇を奪って、頬を舐めてくれた。
「どこにもやらない。俺と一緒に帰るんだ。」
差し出された部屋着は優也さんの匂いがした。
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