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真夜中の_5
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どこまで甘えれば気が済むんだろう。
こんなに近くにいて、触れる事も抱きしめる事も許してもらえているのに。
まだ足りないと思う。
どれだけ強欲になってしまったんだろう。
晒した分だけ優也さんに近付ける気がして、全て明かしてしまいたくなる。
「少し休もう。もう朝だけどな。」
微笑みながら寝室に誘われる。
朝日をカーテンで遮断して、腕の中に身を委ねる。
好きだと言ってしまった事で気持ちが軽くなって
優也さんを思った分、距離が縮まればいい。
_世の中そんなに甘くない。わかってるくせに_
わかってるけど。
この人の優しさに付け入る隙があって、その隙間に僕が入り込めるなら。
汚い部分を隠したままで居座りたい。
いずれ正体がばれるとしても、それまでは…
味わう事のなかった甘さに浸っていたい。
騙すつもりじゃない。
でも、結果的にはそうなってしまうのかな。
優也さんの体温に安心して、睡魔におそわれる。
触れ合った体から気持ちが零れているような錯覚に陥って、つい呟いた。
「好き。」
ごめんなさい。
好きになってしまってごめんなさい。
何も言わなくてごめんなさい。
どうか嫌いになる前に飽きてください。
嫌わないで…
抱きしめられた首筋に唇をおとす。
朝なんてこなくていい。
明日になんかならなければいい。
「そんな顔して、何が心配だ。」
唇をぷにっと突つかれる。
こんなに好きになってしまった事はどのくらい伝わっているんだろう。
「夢、だったらイヤだなって。目が覚めて、1人ぼっちだったら…」
泣いてしまう。そう言いかけた言葉は優也さんの唇に飲み込まれた。
優しく触れて形を確かめるみたいに唇をあわせる。
あわさった隙間から、おずおずと舌を差し出すと宥めるように包み込まれて
何だか泣きたくなって意識しないのに涙が落ちた。
「心配しなくても一人になんてしない。何がイヤでもこれは現実だ」
涙をぬぐう指先まで優しくて、欲深い僕はその全てが自分のためにあればいいと願う。
こんな我が儘は許されない。
わかっているけど…
「涙って、嬉しくても出るんですね。」
心配そうに見つめる優也さんに微笑んでみせる。
これが僕にできる最大限の事だ。これ以上は何もない。
きつく抱きしめられた体温を忘れたくない。
このままずっと一緒にいられたらいいのに。
身の程知らずにもそう願って、僕は眠りに吸い込まれていった。
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