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ヤキモチ_優也2
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いつの間にか眠ってしまっていた。
愁の体は、ひんやりしていて手触りがいい。
ついもう少し眠ってしまいたくなる。
もう九時半になる所だ。少しだけ眠るつもりだったんが、抱き枕が良かったせいか熟睡してしまった。
奏介が何も言ってこないのが不思議だが、邪魔されないならそれに超した事はない。
揺らさないようにそっと起き上がって携帯を確認する。
マナーモードにしたまま伏せてあったおかげで、バイブも機能しなかったようだ。
今週末から世間は連休に入る。いわゆるGWだ。
その連休前の月曜日。
本当なら忙しい時期のはずだが奏介は俺にも在宅で仕事して欲しいと言ってきた。
おぞましい数の着信と、名前を聞いただけで真っ青になるくらい怯えていた愁を心配しての事だろう。
普段は仕事の鬼のくせに。
愁にとっては甘い上司になりそうだな。
愁くんの戸籍を確認しました。戸籍上は彼らと愁くんは赤の他人です。ですが、これ以上危険が及ぶ前に印鑑登録、住所なども変更しておいた方が良いと思われますので、平日の間に区役所にお出かけ下さい。
8時半にこのメール。
これは朝一番で区役所に乗り込んだな。あいつだって睡眠不足だろうに。
本当に奏介は面倒見がいい。
俺の家庭教師だった時もそうだった。
勉強というより、人付き合いを教わって、世渡りを習った気がする。
世の中というのはこうやって渡っていくんだって、いい見本だった。
自分がそうできたかと聞かれたらそれは謎だが。
俺の家庭教師だった頃、奏介の相手はずっと男だった。
だからアヤと関係を持つ時に相談もした。
それが社会人になり関係も家庭教師じゃなく近所の幼なじみ、に戻っても相変わらずいい兄貴的な存在で、それは今に至るまで変わらない。
姉であり、上司だった茉莉花が役員に就任した頃、奏介は大手の製薬会社で働いていた。海外も飛び回る優秀な人材として。
茉莉花が襲われたのはちょうどその頃。
役員から押し出された古狸が、元社員と結託して拉致された。幸いにも大事には至らなかったと言うが、本人からしたらたまったものじゃない。
個人秘書の選抜には時間がかかった。
生粋のお嬢様育ちの茉莉花は我が儘で好みもうるさい。
何十人と優秀な人間を提示しても気に入らなくて親父達が頭を抱えるのを見かねて聞いてみた。
誰か宛てがあるのか、と。
「奏ちゃんみたいな人じゃなきゃ嫌なの。」
真剣にそう言う姉を見て納得した。
幼なじみというのは恐ろしい。
あんな優秀なのを身近で見ていれば、そうなるのは無理もない。
本気で奏介みたいな人物が他にいるとでも思っていたんだろうか。
誰もが頷くその人選だが、転職してもらうには時間がきるだろうと思っていた。長年培ってきたスキルも無駄になるし、だいたい優秀な人物は会社が手放さない。
ところが、奏介は大荷物を抱えて茉莉花の部屋に転がり込んできた。
「茉莉花が必要なのは俺だけだろうと思って」
一連の流れをそれとなく話した次の日には退職届を出したという。
呆気にとられて聞いてみれば、幼い頃からの約束だそうだ。
いつでもどこでも飛んで行くからと。
お姫様には王子様が必要でしょ。
茉莉花の世話ができるのなんて自分しかいないよ。
そう言われ続けていた茉莉花は疑わなかったのだ。
昔から側にいて、茉莉花自身が必要だと分かるまで待ち続ける。
子供の頃からそんな仕込みを続けるなんて、恐ろしい事この上ない。
絶対に敵にしちゃいけない相手だ。
だから奏介が愁に気があるはずがないのは分かりきっている。
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