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新しい_1
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ほんの数分だろうか。
意識を飛ばしてしまった僕の髪を、緩く撫でる優しい指。
いたわるように、慈しむように。
こんなに優しくしてもらえるような事、何もしてないのに。
「何も心配いらない。」
目を開く直前に囁かれる。
「優也さん…好き」
視界に入った腕にしがみつく。
触れても消えてしまわない事を確かめておきたかった。
「ずっとそう言っててくれよ。俺がお前を絶対に守るから。」
女の子に向けるような言葉に、ボロボロッと涙がこぼれる。
そんな水分どこにあったんだろう。
「何で泣く?」
「…っく、嬉しく、て。」
ぐしゃぐしゃ、と頭をかき乱すみたいに撫で回されて両手で顔を挟まれる。
「覚悟しておけよ。俺は絶対に愁から離れてやらないし、他に目移りするのも許さない。」
その手に自分の手を重ねて、僕は少し笑ってしまった。
「そんな怖い顔しないでください。逃げませんから。ただ…」
ふと思い出す。
あの迫力美人の顔を。
「ただ、なんだ?」
「ア、アヤさんはいいんでしょうか。」
それはそれ、とされても困ってしまうのだけど。
優也さんの口がぽかんと開いた。と思ったら、途端に大爆笑をし始めた。
「愁…くくっ、それ、本気で?」
「だって、アヤさんがいれば僕は用無しって…」
肩で笑いながら、僕の額をピンっと弾く。
「あぁ、そうか。それでお前は突然いなくなったんだな。」
納得したような顔をして1人で頷く。
今度はこっちがぽかんとしてしまう。
「アヤは、ただの腐れ縁だ。古い友人で、付き合ってた事もない…。妬いたのか?」
やく、ヤク、妬、く…
そうか、あの気分の悪さはヤキモチだったんだ。
「…そう。みたいです。」
視界に優也さんが入り込む。
さっきまで笑ってた口元を引き締めて僕に向かう。
「一緒に暮らしたいのも、秘書にしたいのも、愁だけだ。今までも、これからも。」
「先の事なんて、わかりませんよ。」
僕の反論に首を横に振って微笑む。
「わかるさ。」
涙を拭ってくれる人差し指を目で追いかけながら、その仕草に見惚れていた。
視線を操作するみたいに、くるりと指を動かして優也さんはその指を自分の唇に当てる。
すっかり操られている僕は、磁石みたいに吸い寄せられて驚くほど自然にキスをした。
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