アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
時間
-
目が覚めると、室内は暗くなっていた。
何時間くらい抱き合っていたんだろう。
外にいた時間はほんの数時間だけだったはずだけど…
寝返りをうとうとして、腕枕で眠っていたと知る。
気付いたらすっかり日が暮れていたのと、この体の痛み方には覚えがあって苦笑してしまう。
体の中から、すっかり満足していて。
こうして微睡んでいられる事でさえ幸せな気分にさせる。
何も解決していないのにこんなに満たされた気分でいてもいいんだろうか。
後ろからすっぽり抱まれて嫌な夢を見ることもなく熟睡してしまっていた。
優しくされて、甘やかされて、好きすぎる人に欲しいと言ってもらえる立場。
ここにいたい。
でも…
「愁」
かき寄せるみたいにしがみつかれて
心地良い体温に、うっとりと目を閉じる。
「何も心配しなくていい。」
首筋に唇を押し当てられながら聞くこの声は、心臓に悪い。
どきどきと心臓が踊り出す。
「優也さん…」
この人を裏切りたくない。
アノヒト達と関わって欲しくない。
…
僕が戻れば、それですむ話。
でも。
戻りたくない。
人の温もりを知った今、戻って正気でいられる自信がない。
「俺の頼みを聞いてくれないか。」
くるりと反転させられて向き合う。
黒い瞳が僕を見つめていて、目が離せなくなる。
その視線が全身をつなぎ止めているみたいに動けなくて。
優也さんの唇が動くのをじっと見つめた。
「ここにいてくれ。俺の手の届く距離に。」
伸ばされた手をつかんで頬を寄せると、優也さんがはにかむように微笑んだ。
「こんな風に誰かを思った事、なかったんだ。愁の事なら何でも知っていたいし、一緒にいられない理由があるならどんな手を使っても取り除きたい。知りたいのはただの我が儘だ。言いたくないなら無理には聞かない。俺が共有したいのは愁との未来だから。」
「みらい…」
そんな壮大な夢は妄想の中だけで充分なのに
こんな真剣な瞳で言われたら笑い飛ばす事もできない。
そして、本気でぶつかってくれている優也さんにいつまでも隠し事をしておくのは
やっぱり心苦しい。
それでも黙ったままでいたいと卑怯者の僕が叫び
嫌われても正直に話しておくべきだと偽善者の僕が諭す。
隠し続けている事で、優也さんが巻き込まれてしまうかもれない。
そんな事態は避けたい。
甘い時間は終わりになるのかもしれない。
もともと僕には高望みがすぎたんだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
112 / 155