アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
時間_2
-
「たくっ、油断も隙もない。」
苦笑しながら言って奏介さんの手を払いのける。
机の上には調査書…
やっぱり。
「食べたい物はあるか?」
入口から遠くに座らされてしまう。
「何かされたのか?」
「どこか痛いの?」
同時に聞かれて慌てて顔を上げる。
2人に向かって、ぶんぶんと首を横に振る。
「あの、それ…」
おずおずと調査書を差す。
「ああ。これでひとまず調査は終わりだ。後は調べても俺と一緒の行動範囲しか出てこないからな。やましい事がのってないか心配か?」
やましい事がのっていたから、こんなに怒っているんでしょう?
そう聞きたいけど聞けない。
どう切り出されるのか…
そればかりがこんなに恐ろしい。
怖い出来事なんて沢山あったのに、優也さんにいらないと言われるのがこんなにも怖い。
「ここまで調べれば誰からも文句は言われない。名刺だけはすぐに手配してくれ。」
「持ってきていますよ。」
はい。と社名の入った名刺ケースが目の前に置かれる。
「…え?」
「ゆうくんは、せっかちだからね。これを貰った人はもう、自分の意志だけで退職はできないんだよ。受け取るには覚悟が必要なんだ。言っておく事はない?」
柔らかい表情で奏介さんが問い掛ける。
それって…?
このご時世、調べのつかないような事はそんなに多くはないだろう。
僕の隠している過去だって…
「調べが、ついたんでしょう?僕が何をしてきたか…だから…もう…」
「もう、何だ?逃げたくなったか。飽きるまで側にいてくれるんだろう。俺はまだ飽きるどころか足りないくらいだ。」
その言葉といい名刺といい、どんな冗談なの。
それとも自分から辞退するのを待ってるの?
…
「一つ、教えてもらいたい事がある。」
沈黙を破ったのは優也さん。
これは最終通告だ。
「…何でしょうか。」
申し訳ない気分でいっぱいだ。
せめて後は何を聞かれても答えよう。
男を抱ける人だ。そんな遊びをした事もあるだろう。何かの役にたてばいい。
「母親に会わせてくれたと夏彦に礼を言っていたが、行方はわからなかった。どこにいる?」
どこにって…
「…死にました。」
「…遺骨はどうした。」
思い出していた。
サラサラと手の平から流れていく白い粉
彼女がこんな物体になってしまっても悲しいと思えなかった日の事を。
僕はもう人じゃなくなってしまったと真剣に思った。
「散骨したんです。海に。」
「…死因は?」
優也さんが知りたかったのは殺人の方だったのか、とようやく気付いた。
それももう、話すしかない。
手の平を握ったり開いたりしながら覚悟を決めた。
「僕が…殺したんです。初めて会った日から、正気が保てない程、薬漬けでした。だから…」
いつもより多く渡した。
命にかかわると知っていた。
それでも、苦しむ彼女を見るのが辛かった。
自分もすぐに後を追うはずだったんだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
129 / 155