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正解は
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名刺を受け取らなかった僕を責めるようにベットに連れ込まれて、夢中になっている間に抱きすくめられた。
こんなに暖かい場所を覚えてしまって戻れるはずもないのに。
名刺を受け取る事が躊躇われて、まごまごしていると優也は目に見えて弱った顔をした。
困って泣きそうな表情。
そんな顔、させたくない。ましてや僕の事なんかで…
この人はいつも不敵に微笑んでいなくてはいけない。
僕がここにいて一緒に仕事をする事でそれは避けられる事。
それならここにいればいい。
暖かい優しいこの場所に。
いらなくなったらちゃんと処分してくれるというこの場所で
甘えていればいい…
困った顔をさせたくなくて側にいれば、アノヒト達を近付ける事になる。
どちらが正しい選択なのか、僕にはもうわからない。
ただ、側にいたい。
祖父母が亡くなってから20年弱、他人から距離をとって暮らし続けてきた。
誰かと一緒にいたいなんて考えた事もなかった。
でも、この人は…
軽々と僕を覆っていた壁を飛び越えて、あっさり心を握ってしまった。
包み込む様に柔らかく、丁寧に握られたそれは輝いて見えた。
自分の中にあった心だとは思えないほどに、きらきらと。
どんな汚い生き方をしてきたかを忘れてしまったかのように。
「愁…何、考えてる?」
腕枕をされて肩を抱かれたまま、ぼんやりと天井を見上げていた僕はその声に引っ張られるように体をすりよせた。
「優也の、事。どうしてこんなに…好き、なんだろう。って…」
言いながら恥ずかしくなって肩にカリリと噛み付いてみる。
唇をあてたまま舌を這わせて舐めてみると、ほんのり汗の味がした。
「ふふっ。なんだ、子犬でも飼ってる気分だな。」
ふわりと横を向いた優也が、額に唇をよせた。
「愁…どこにも行かないでくれよ」
漆黒の瞳に写るほんのりとした不安。
そんな風に心配してもらう価値もないのに…
「子犬は飼い主と一緒にいるのが一番の幸せなんです。だから…」
「だから?」
これが正しい選択じゃなくても、もう引き返せない。
僕も、きっと優也も…
ゆっくりと近付いて、そっと唇を重ねる。
「ちゃんと繋いで、いつも側に置いてください。」
そう言って見つめ続けると、優しい顔になった優也がふわりと笑う。
そのまま胸元にぐいっと抱きしめられて僕もその体にしがみつく。
「ああ。わかった。今度こそ本当に約束だ。」
とくん、とくん
心臓の音が自分の鼓動と溶けあうように聞こえて、意味も無く安心する。
大切で大切で大好きな、この気持ちがうまく伝わるといいのに。
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