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休日_1
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朝日が昇る頃に妙にスッキリ目が覚めて、隣で眠る優也をまじまじと眺めながら自分が笑っている事に気がついた。
そっと起き上がって、スッキリとした頬のラインをなぞってみて、夢じゃない事を確認する。
背中を向けてみても規則正しい寝息が聞こえてきて、暖かいような気になってしまう。
毎日一緒に眠るっていうのは、寝ても覚めても同じ所にいるという事。
不思議と息苦しさは感じない。
一人暮らしが長かったから、他人と暮らすにはもっと度胸と気持ちのゆとりが必要かと思っていたけど。
優也だから…なのかな。
この唇から名前を呼ばれるだけで気持ちが優しくなる。この手が触れた所がぽかぽかする。
一生無縁だと思っていた他人の優しさがすぐ隣にあって、ここにいてもいいと言ってくれている。
こんなに幸せな事があっていいんだろうか。
僕は汚い…
それに…
過去を全て消してしまいたい。
そんな事、出来はしないのはわかっているから。
関わらないでもらいたい。
僕の事を忘れてもらいたい。
いなかったものと…
「なんだ、朝から泣きべそか。」
「うわっ、泣いてなんかっ…っ」
後ろから羽交い締めにあって、布団に逆戻り。
裸の背中に押し付けられる体温に頬が緩む。
よしよし、とばかりに頭を撫でられて全身の力が抜けていくような気がした。
「愁が、泣いてる時にできる事はこれだけか…」
耳元で囁かれるとゾクゾクする。
悪戯心がムクムク湧いてきて小さく笑ってしまう。
「他には何をしてくれるんですか?」
くるりと向き合った瞳は優しくて、視線さえも暖かい。
それを感じていたくて優也の頬を両手で包んで近付いて、軽くその唇に口づけた。
微笑んで僕を見ているその姿は、受け止められているようで恥ずかしかった。
「何でもしてやる。欲しい物は何でも買ってやるし、嫌いなヤツはみんな排除してやる。俺の包容力を舐めるなよ。」
「それは甘やかし過ぎです。」
本当に何でも買ってきそうで怖い。
笑いながら答えてベットから起きあがろうとすると強く抱きしめたられた。
とくん、とくん
心臓の音がして、うっとり目を閉じる。
「俺は嘘はつかない。黙って見過ごす事も得意じゃない。」
「はい」
とくん、とくん、とくん
心音が重なる。
「捨てたくても捨てられないなら俺に預けろ。命のついでに預かってやる。」
「え…」
ギクッとして見上げると見透かしたみたいな笑顔がすぐそこにあって、逸らそうとした視線を唇が遮った。
この緩やかな時間と人肌に、何もかもがほどけていくような預けてしまいたいような感覚。
でも…
「僕は、何も持ってないから…捨てる物なんてありませんよ。」
「そうか。」
落胆したようにも聞こえる言い方が何だか切なくて慌てて付け加える。
「優也、を失いたくない。だけです。」
そう、それ以外には何もないのだから。
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